ON MODE
世間はクリスマスムード一色。街にはイルミネーションの電球があちらこちらに取り付けられ、立ち並ぶ店はクリスマスツリーやクリスマスリースを模したデコレーションがなされている。年の瀬が近付いた今、メディアも浮き足立っていて、最近のテレビ番組表は二時間、三時間のスペシャル番組が目立つ。アイドルとして仕事をしている身であるから、クリスマスから年末年始にかけては大忙し。今日は四時間生放送の音楽番組に出演することになっていた。
「スペシャルメドレーって、歌う機会あんまりないからどきどきするなぁ!」
「生放送ですからね。絶対、失敗しないでくださいよ」
「プレッシャーかけるなよな! しないけど」
むっと唇を尖らせる。数々のステージを経験し、生放送にも随分と慣れた。長時間の音楽番組となると、人気の出演者は一曲だけではなく二~三曲のメドレー形式でのパフォーマンスを依頼されることも多い。IDOLiSH7も例に漏れず『WiSH VOYAGE』から始まり『ナナツイロ REALiZE』と『MEMORiES MELODiES』を歌うことになっている。
「この衣装も久しぶりじゃんな」
左肩についた飾りを指先でいじりながら環が笑う。
「最近はナナツイロが多いもんね」
白を基調とした『MEMORiES MELODiES』の衣装を着たメンバーを見渡して、陸はほう……と溜息をつく。
(やっぱ、一織って王子さまみたい)
メンバーにすら伏せているけれど、一織と陸は三ヶ月ほど前から特別な関係にある。誰にも秘密で、部屋の行き来だって毎回気を張っているし、部屋で二人きりになっても、いつメンバーが訪ねてくるともわからないから、内緒話をするように唇を触れ合わせるのが精一杯。本当はもう少し先に進みたいと思っているところだ。
(……って、今は仕事中! 集中しなきゃ!)
ぱん! と両頬を軽く叩いて気を引き締める。
「リク、百面相です?」
陸の様子を見ていたナギが心配そうに顔を覗き込んできたため、慌てて「大丈夫!」と返した。そのやりとりに気付いた一織がなにごとかと陸の元へ歩み寄ってくる。
「ひゃっ……」
ひたり、と一織の冷たい手が首筋に当てられ、陸は思わず肩を跳ねさせてしまった。
「熱、はないようですね。長丁場だったとはいえ、私たちの出番は番組の終盤です。あと少し持ちこたえてくださいよ」
「大丈夫だってば! あの、さ……」
手を口許に添え、声を潜める。だって、こんなの、メンバーに聞かれたくない。陸の所作に首を傾げながら、一織はほんの少しだけ、陸のほうへと身体を寄せた。
「久しぶりに見た一織のこの衣装、格好いいなって思って」
その先は声に出すのも照れくさいから、唇の動きだけ。
「なっ……」
ぶわっと耳まで真っ赤に染まる一織。あーあ、もうすぐ本番なのになぁと、自分のおねだりのせいなのに、陸はからからと笑った。クリスマスは家族や友人と過ごすものだというけれど、やっぱりここは、恋人としての時間も確保したい。
『キスがしたいな』
本当はキスだけじゃたりないとそろそろ言ってやりたいところだけれど、今は仕事中なので、我慢、我慢。
「あっ、一織! そろそろ出番だって!」
真っ赤になったままの彼の手を引く。ステージでは会場の観客とテレビの向こうの皆へ、歌という、とびっきりのクリスマスプレゼントを贈って、そのあとは……。
(一織にも、メリークリスマス!)
「スペシャルメドレーって、歌う機会あんまりないからどきどきするなぁ!」
「生放送ですからね。絶対、失敗しないでくださいよ」
「プレッシャーかけるなよな! しないけど」
むっと唇を尖らせる。数々のステージを経験し、生放送にも随分と慣れた。長時間の音楽番組となると、人気の出演者は一曲だけではなく二~三曲のメドレー形式でのパフォーマンスを依頼されることも多い。IDOLiSH7も例に漏れず『WiSH VOYAGE』から始まり『ナナツイロ REALiZE』と『MEMORiES MELODiES』を歌うことになっている。
「この衣装も久しぶりじゃんな」
左肩についた飾りを指先でいじりながら環が笑う。
「最近はナナツイロが多いもんね」
白を基調とした『MEMORiES MELODiES』の衣装を着たメンバーを見渡して、陸はほう……と溜息をつく。
(やっぱ、一織って王子さまみたい)
メンバーにすら伏せているけれど、一織と陸は三ヶ月ほど前から特別な関係にある。誰にも秘密で、部屋の行き来だって毎回気を張っているし、部屋で二人きりになっても、いつメンバーが訪ねてくるともわからないから、内緒話をするように唇を触れ合わせるのが精一杯。本当はもう少し先に進みたいと思っているところだ。
(……って、今は仕事中! 集中しなきゃ!)
ぱん! と両頬を軽く叩いて気を引き締める。
「リク、百面相です?」
陸の様子を見ていたナギが心配そうに顔を覗き込んできたため、慌てて「大丈夫!」と返した。そのやりとりに気付いた一織がなにごとかと陸の元へ歩み寄ってくる。
「ひゃっ……」
ひたり、と一織の冷たい手が首筋に当てられ、陸は思わず肩を跳ねさせてしまった。
「熱、はないようですね。長丁場だったとはいえ、私たちの出番は番組の終盤です。あと少し持ちこたえてくださいよ」
「大丈夫だってば! あの、さ……」
手を口許に添え、声を潜める。だって、こんなの、メンバーに聞かれたくない。陸の所作に首を傾げながら、一織はほんの少しだけ、陸のほうへと身体を寄せた。
「久しぶりに見た一織のこの衣装、格好いいなって思って」
その先は声に出すのも照れくさいから、唇の動きだけ。
「なっ……」
ぶわっと耳まで真っ赤に染まる一織。あーあ、もうすぐ本番なのになぁと、自分のおねだりのせいなのに、陸はからからと笑った。クリスマスは家族や友人と過ごすものだというけれど、やっぱりここは、恋人としての時間も確保したい。
『キスがしたいな』
本当はキスだけじゃたりないとそろそろ言ってやりたいところだけれど、今は仕事中なので、我慢、我慢。
「あっ、一織! そろそろ出番だって!」
真っ赤になったままの彼の手を引く。ステージでは会場の観客とテレビの向こうの皆へ、歌という、とびっきりのクリスマスプレゼントを贈って、そのあとは……。
(一織にも、メリークリスマス!)