解決! 春のミステリー
*2022/04/17開催いおりくwebオンリー『春のうさぎはいちごホリック』 クイズラリー用に書いたフレーバーテキスト
二〇二二年四月某日、七智探偵事務所に手紙が送られてきた。羊皮紙でできたと思われる封筒に、差出人は書かれていない。封蝋で閉じられているのを開封しようとして、兎と苺の紋章に気付いた。苺が好きだと訴える兎が愛らしく、陸久は顔をほころばせる。
「なになに……会場にいくつかの謎を置いてきた……?」
これは大変だ。謎がどこかに放置されているなんて、一刻も早く駆け付けて、解き明かさなければ。事務所の片隅、椅子に腰かけたまま仮眠をとる一狼に声をかけた。
「一狼、出かける支度して!」
「なんだ、依頼か?」
仮眠といいつつも、彼は熟睡しないタイプのようで、陸久が声をかけるとすぐに目を覚ましてくれる。兎と狼、まったく別の種族だけれど、動物繋がりで一狼の眷属が関係しているかも。彼と一緒のほうが、早く解決できることが多いし。
「そう! 会場にあるんだって」
「会場?」
一狼の言葉に、陸久は動きを止める。
「えっと……どこだろう?」
「手紙に書いてないのか?」
送られてきた手紙に視線を落とす。便箋は二枚。続きが書かれてあったようだ。
「この程度のことも見落としたくせに謎を解くなんて、とんだ名探偵だな」
「うるさいなぁ」
一狼のからかいにふくれっ面で言い返しながら、文章を読み進める。
「二〇二二年四月十七日。会場は……ピクトスクエア……あぁ、これだ。しかも十時から二十一時って時間制限も書いてある」
横から覗き込んできた一狼に手紙を渡す。
「会場内にちりばめられたクイズを解き、キーワードを集めろ。最後の謎への扉は、虹色の兎が持っている……?」
「虹色の兎ってなんだろ」
「さぁ? そんな珍しいの、本当にあるんだとしたら、見ればすぐにわかるだろ」
◇
指定された会場内で四つの謎を解いた一狼と陸久。虹色の兎も難なく見つけ、その懐から最後の謎に繋がる鍵を入手した。
「歩き回って遅くなっちゃった」
「途中で寄り道ばかりするからだろ」
「だって、楽しそうな絵とか、中身が気になる漫画とか小説がたくさんあったんだもん。全部見て回っちゃった!」
謎を解くには頭を使う。しかし、目の前の謎にばかり気を取られていてはいけない。世界にはかなしいこともさみしいこともあるけれど、きれいなものや楽しいことだってたくさんある。目にしたものから得た情報を自分なりに消化することも、探偵には必要だ。――陸久の言葉に、一狼は「そうかもな」と呟いた。
「このあとにあるのが最後の謎だ。ちゃんと、これまでのキーワードはメモしてあるんだろうな?」
事務所に届いた手紙の端に、四つの謎から得たキーワードを使って最後の謎を解くように書かれてあった。
「もちろん!」
だって名探偵だからね! ――誇らしげに胸を張る陸久。対する一狼は、本当にこれが最後なのだろうかと、胸騒ぎを感じていた。
◇
「やっぱりな」
入手した鍵で扉を開くと、指示書が置かれていた。
四つのキーワードを指定されたとおり組み合わせたはいいものの、それは最後の謎を解くための準備で、実際の謎はこの先だと書かれてあるではないか。
「え~! これで帰れると思ったのに!」
「えー、じゃない。ここまできたらあと少しだ。さっさと解くぞ、名探偵さん」
陸久は、一狼がわざとらしく「名探偵さん」と呼んでくるのがくすぐったくてたまらない。ただの厭味なら腹を立てるのだが、一狼が本当に信頼してくれているからこその言い方だとわかっているから、怒るに怒れない。
「まかせて! すぐに解いて、謎だらけでもやもやした気持ちも、すっきりさせてあげるから!」
ある日突然、事務所にやってきた一狼。彼の目的は――教えてもらうのではなく自分で突き止めてみろと言われたから――まだわからないけれど、一緒にいれば、どんな謎も解決できる気がする。
二〇二二年四月某日、七智探偵事務所に手紙が送られてきた。羊皮紙でできたと思われる封筒に、差出人は書かれていない。封蝋で閉じられているのを開封しようとして、兎と苺の紋章に気付いた。苺が好きだと訴える兎が愛らしく、陸久は顔をほころばせる。
「なになに……会場にいくつかの謎を置いてきた……?」
これは大変だ。謎がどこかに放置されているなんて、一刻も早く駆け付けて、解き明かさなければ。事務所の片隅、椅子に腰かけたまま仮眠をとる一狼に声をかけた。
「一狼、出かける支度して!」
「なんだ、依頼か?」
仮眠といいつつも、彼は熟睡しないタイプのようで、陸久が声をかけるとすぐに目を覚ましてくれる。兎と狼、まったく別の種族だけれど、動物繋がりで一狼の眷属が関係しているかも。彼と一緒のほうが、早く解決できることが多いし。
「そう! 会場にあるんだって」
「会場?」
一狼の言葉に、陸久は動きを止める。
「えっと……どこだろう?」
「手紙に書いてないのか?」
送られてきた手紙に視線を落とす。便箋は二枚。続きが書かれてあったようだ。
「この程度のことも見落としたくせに謎を解くなんて、とんだ名探偵だな」
「うるさいなぁ」
一狼のからかいにふくれっ面で言い返しながら、文章を読み進める。
「二〇二二年四月十七日。会場は……ピクトスクエア……あぁ、これだ。しかも十時から二十一時って時間制限も書いてある」
横から覗き込んできた一狼に手紙を渡す。
「会場内にちりばめられたクイズを解き、キーワードを集めろ。最後の謎への扉は、虹色の兎が持っている……?」
「虹色の兎ってなんだろ」
「さぁ? そんな珍しいの、本当にあるんだとしたら、見ればすぐにわかるだろ」
◇
指定された会場内で四つの謎を解いた一狼と陸久。虹色の兎も難なく見つけ、その懐から最後の謎に繋がる鍵を入手した。
「歩き回って遅くなっちゃった」
「途中で寄り道ばかりするからだろ」
「だって、楽しそうな絵とか、中身が気になる漫画とか小説がたくさんあったんだもん。全部見て回っちゃった!」
謎を解くには頭を使う。しかし、目の前の謎にばかり気を取られていてはいけない。世界にはかなしいこともさみしいこともあるけれど、きれいなものや楽しいことだってたくさんある。目にしたものから得た情報を自分なりに消化することも、探偵には必要だ。――陸久の言葉に、一狼は「そうかもな」と呟いた。
「このあとにあるのが最後の謎だ。ちゃんと、これまでのキーワードはメモしてあるんだろうな?」
事務所に届いた手紙の端に、四つの謎から得たキーワードを使って最後の謎を解くように書かれてあった。
「もちろん!」
だって名探偵だからね! ――誇らしげに胸を張る陸久。対する一狼は、本当にこれが最後なのだろうかと、胸騒ぎを感じていた。
◇
「やっぱりな」
入手した鍵で扉を開くと、指示書が置かれていた。
四つのキーワードを指定されたとおり組み合わせたはいいものの、それは最後の謎を解くための準備で、実際の謎はこの先だと書かれてあるではないか。
「え~! これで帰れると思ったのに!」
「えー、じゃない。ここまできたらあと少しだ。さっさと解くぞ、名探偵さん」
陸久は、一狼がわざとらしく「名探偵さん」と呼んでくるのがくすぐったくてたまらない。ただの厭味なら腹を立てるのだが、一狼が本当に信頼してくれているからこその言い方だとわかっているから、怒るに怒れない。
「まかせて! すぐに解いて、謎だらけでもやもやした気持ちも、すっきりさせてあげるから!」
ある日突然、事務所にやってきた一狼。彼の目的は――教えてもらうのではなく自分で突き止めてみろと言われたから――まだわからないけれど、一緒にいれば、どんな謎も解決できる気がする。