love is crazy.
エゴサーチはほどほどに。紡からも万理からもそう言われているものの、気になるものは気になるし、臭いものに蓋をするだけの人生を送るつもりはない。ゆえに、新曲をリリースしたあとは、念入りにエゴサーチをするようにしている。音楽に生きようと決めたからには、音楽をやっている自分への評価をしっかりと把握しておきたい。
『Mr.AFFECTiON』と『ハツコイリズム』が収録されたシングルCDがリリースされた日の夜から、壮五は毎日のようにSNSと睨めっこをしていた。
新曲に対する評価はおおむね好評といったところか。どちらも、これまでのIDOLiSH7とは少し毛色の違う楽曲だからどうかなと思っていたが、ありがたいことに、シングルCDのデイリーランキングでは一位を獲得している。SNS上でも、メンバーそれぞれのパートを褒める声が多く見受けられたことに、壮五はほっと胸を撫で下ろす。少し前に発表したMEZZO”の新曲では好みがすっぱりと分かれたらしく、SNS上ではファン同士が言い争うなどの騒ぎがあったが、今回はその心配もなさそうだ。作曲の進捗が芳しくないものの、次に壮五が発表するつもりの楽曲も――MEZZO”のものになるか、IDOLiSH7のものになるかはまだわからないが――音楽を愛する人たちに届けばいいなと思う。
「……ん?」
新曲リリースから数日置いた今日は『ハツコイリズム』の衣装デザインに関する記事が出たからか、それに対するリアクションが多い。
恋と聞いてそれぞれが思う答えを衣装デザインに取り入れたとのこと。その〝答え〟の出処は、ジャパン・ミュージカル大賞に選ばれたTRIGGERへのサプライズプレゼントを贈るべく向かったレストランで閉じ込められた時のものだ。脱出できるか否かに影響するものだったから必死の思いで答えたのだが……事件そのものは当事者間の胸に留めているとはいえ、自分たちの解釈がこんなふうに世間様に広まってしまうなんて。
それでも、壮五にとっての〝恋〟の認識はあの時と変わっていないし、悪いことをしているわけではないのだから、胸を張っていよう。――それが、衣装デザインに関する記事が公開されると聞いた時に、壮五が心に決めたことだ。
その記事を読んで盛り上がるファン。素晴らしい曲からの引用とはいえ、さすがにラブイズクレイジーは自分のイメージと違い過ぎて驚かせてしまっただろうかと、壮五はSNSの検索語句に、自分の名前を追加した。ライブや出演番組などで環が「そーちゃん」と呼ぶことで、ファンの間でも「そーちゃん」というあだ名が浸透しているから、文字として〝そーちゃん〟と打ち込むのはなんだか照れくさいなと思いつつ、本名のほか、あだ名でもエゴサーチを試みる。
――壮五、透けレースだって!
――そーちゃん、パンツは?
「えっ?」
ものすごいスピードで画面をスクロールし、エゴサーチに引っかかった投稿文に目を通す。
――あんなところまで透けてるなら、紐パンじゃないとパンツ見えちゃう!
自分のキャパシティを超えることに遭遇したオタクは「待って」と言いがちだと、ナギから聞いたことがある。その時は「そうなんだ」としか思わなかったが、今、生まれて初めて「待って」と言いたくなる気持ちを真の意味で理解した。ノースメイアで環が連れてきたダグラスにハグをしてもらえた時以上に、理解が追い付かない。
――紐パンかTバックじゃない? もしくはノーパン。
そんなわけないだろう。さすがに下着は穿いている。
壮五は自分の太腿に視線を落とした。確かに、あの衣装は、このあたりまで側章が刺繍されていた。透けた部分が生じるデザインといっても、肌の色に限りなく近い厚手のタイツを穿いていたから、自分はまったく気にしていなかったのだが。
「もしかして、貧相な地肌を見せるはしたないやつって思われてる……?」
「そーちゃんは、気にし過ぎ」
「ひっ」
いつからそこにいたのだろう。スマートフォンを両手でぎゅっと握ったまま、壮五はびくりと肩を竦めた。
「またエゴサしてんの? やめとけって、あんた、胃痛くするから」
「胃にはこないよ、さすがに……」
エゴサーチのたびに胃を痛めていたら、胃がいくつあってもたりない。たくさん仕事をいただいて、ひとつずつこなしていくうちに、壮五の心身は鍛えられている。
「それでも! おしまいったらおしまい。はい、しゅーりょー」
むっと唇を尖らせた環に、スマートフォンをあっけなく奪い取られてしまう。
「……もしかして、なにか怒ってる?」
だって、なんだか声色が。
「わかんねえの?」
「わからないから訊いてる、って、ちょっと、なに」
ぽすんと優しくベッドに押し倒され、頬に熱が集まった。不機嫌なくせに、どうしてこんなこと。
「あのさぁ、コイビトがネットでエロい目で見られてんの、カレシとしては、おもしろくないに決まってんじゃん」
『Mr.AFFECTiON』と『ハツコイリズム』が収録されたシングルCDがリリースされた日の夜から、壮五は毎日のようにSNSと睨めっこをしていた。
新曲に対する評価はおおむね好評といったところか。どちらも、これまでのIDOLiSH7とは少し毛色の違う楽曲だからどうかなと思っていたが、ありがたいことに、シングルCDのデイリーランキングでは一位を獲得している。SNS上でも、メンバーそれぞれのパートを褒める声が多く見受けられたことに、壮五はほっと胸を撫で下ろす。少し前に発表したMEZZO”の新曲では好みがすっぱりと分かれたらしく、SNS上ではファン同士が言い争うなどの騒ぎがあったが、今回はその心配もなさそうだ。作曲の進捗が芳しくないものの、次に壮五が発表するつもりの楽曲も――MEZZO”のものになるか、IDOLiSH7のものになるかはまだわからないが――音楽を愛する人たちに届けばいいなと思う。
「……ん?」
新曲リリースから数日置いた今日は『ハツコイリズム』の衣装デザインに関する記事が出たからか、それに対するリアクションが多い。
恋と聞いてそれぞれが思う答えを衣装デザインに取り入れたとのこと。その〝答え〟の出処は、ジャパン・ミュージカル大賞に選ばれたTRIGGERへのサプライズプレゼントを贈るべく向かったレストランで閉じ込められた時のものだ。脱出できるか否かに影響するものだったから必死の思いで答えたのだが……事件そのものは当事者間の胸に留めているとはいえ、自分たちの解釈がこんなふうに世間様に広まってしまうなんて。
それでも、壮五にとっての〝恋〟の認識はあの時と変わっていないし、悪いことをしているわけではないのだから、胸を張っていよう。――それが、衣装デザインに関する記事が公開されると聞いた時に、壮五が心に決めたことだ。
その記事を読んで盛り上がるファン。素晴らしい曲からの引用とはいえ、さすがにラブイズクレイジーは自分のイメージと違い過ぎて驚かせてしまっただろうかと、壮五はSNSの検索語句に、自分の名前を追加した。ライブや出演番組などで環が「そーちゃん」と呼ぶことで、ファンの間でも「そーちゃん」というあだ名が浸透しているから、文字として〝そーちゃん〟と打ち込むのはなんだか照れくさいなと思いつつ、本名のほか、あだ名でもエゴサーチを試みる。
――壮五、透けレースだって!
――そーちゃん、パンツは?
「えっ?」
ものすごいスピードで画面をスクロールし、エゴサーチに引っかかった投稿文に目を通す。
――あんなところまで透けてるなら、紐パンじゃないとパンツ見えちゃう!
自分のキャパシティを超えることに遭遇したオタクは「待って」と言いがちだと、ナギから聞いたことがある。その時は「そうなんだ」としか思わなかったが、今、生まれて初めて「待って」と言いたくなる気持ちを真の意味で理解した。ノースメイアで環が連れてきたダグラスにハグをしてもらえた時以上に、理解が追い付かない。
――紐パンかTバックじゃない? もしくはノーパン。
そんなわけないだろう。さすがに下着は穿いている。
壮五は自分の太腿に視線を落とした。確かに、あの衣装は、このあたりまで側章が刺繍されていた。透けた部分が生じるデザインといっても、肌の色に限りなく近い厚手のタイツを穿いていたから、自分はまったく気にしていなかったのだが。
「もしかして、貧相な地肌を見せるはしたないやつって思われてる……?」
「そーちゃんは、気にし過ぎ」
「ひっ」
いつからそこにいたのだろう。スマートフォンを両手でぎゅっと握ったまま、壮五はびくりと肩を竦めた。
「またエゴサしてんの? やめとけって、あんた、胃痛くするから」
「胃にはこないよ、さすがに……」
エゴサーチのたびに胃を痛めていたら、胃がいくつあってもたりない。たくさん仕事をいただいて、ひとつずつこなしていくうちに、壮五の心身は鍛えられている。
「それでも! おしまいったらおしまい。はい、しゅーりょー」
むっと唇を尖らせた環に、スマートフォンをあっけなく奪い取られてしまう。
「……もしかして、なにか怒ってる?」
だって、なんだか声色が。
「わかんねえの?」
「わからないから訊いてる、って、ちょっと、なに」
ぽすんと優しくベッドに押し倒され、頬に熱が集まった。不機嫌なくせに、どうしてこんなこと。
「あのさぁ、コイビトがネットでエロい目で見られてんの、カレシとしては、おもしろくないに決まってんじゃん」