寒さのせい
建物を出た瞬間、頬を撫でる冷たい風。コートを着ていなかったらもっと寒かったかもしれない。それくらいには冷え込んでいるくせに、吐く息は透明だ。こまめに天気予報を見ておかなければ、着る服の選定を見誤ってしまいかねない、そんな、季節と季節の間。
壮五の性格上、天気予報を気にかけること自体は苦ではないものの、いまひとつ決断力に欠けるせいで、アウターで調整するべきか、インナーを変えるべきか……と、毎朝、鏡の前で服に悩んでしまう。おかげさまで、最近の起床時間はこれまでより五分早めだ。
たかが五分、されど五分。
自分の少し前を歩いている誰かさんみたいに「あと五分寝かせて」と甘えたことを言えない壮五は、ほんの少しだけ、睡眠不足だった。目を覚ました時の自身のコンディションも判断材料にしているため、前夜のうちに決めておくこともできない。
たった一晩でコンディションが変わるのか? 答えは、イエスだ。
恋仲にある環とは、毎晩どちらかの部屋で、内緒話をするようにくちづけを交わしている。あまりにも心地よくて夢中になって、そろそろ眠ろうかと部屋を出る頃には身体中が熱くなってしまう。
翌日の予定次第では、部屋に戻ることをやめてそのままベッドになだれ込むこともあるのだが、朝早くから仕事がある場合は互いに後ろ髪を引かれる思いで一人寝の夜を選んでいる。
互いに初めての恋だから、うまくコントロールできない。裸になって恥ずかしいところも見せているのに、くちづけを交わすだけでも、実は、ファーストキスの時くらいどきどきしている。
数歩前を歩く環が小声でなにか言ったようだが、壮五の気が逸れていたからか、それとも、彼の声が小さかったからか、聞き取ることができなかった。
「どうしたの?」
二、三歩、大股開きで進んで隣に並ぶ。
「さみーなって言った」
「そうだね」
「そ。だから、くっついて歩こ」
互いの腕がくっついている。たったそれだけのことで、心が熱い。
「……そうだね」
壮五の性格上、天気予報を気にかけること自体は苦ではないものの、いまひとつ決断力に欠けるせいで、アウターで調整するべきか、インナーを変えるべきか……と、毎朝、鏡の前で服に悩んでしまう。おかげさまで、最近の起床時間はこれまでより五分早めだ。
たかが五分、されど五分。
自分の少し前を歩いている誰かさんみたいに「あと五分寝かせて」と甘えたことを言えない壮五は、ほんの少しだけ、睡眠不足だった。目を覚ました時の自身のコンディションも判断材料にしているため、前夜のうちに決めておくこともできない。
たった一晩でコンディションが変わるのか? 答えは、イエスだ。
恋仲にある環とは、毎晩どちらかの部屋で、内緒話をするようにくちづけを交わしている。あまりにも心地よくて夢中になって、そろそろ眠ろうかと部屋を出る頃には身体中が熱くなってしまう。
翌日の予定次第では、部屋に戻ることをやめてそのままベッドになだれ込むこともあるのだが、朝早くから仕事がある場合は互いに後ろ髪を引かれる思いで一人寝の夜を選んでいる。
互いに初めての恋だから、うまくコントロールできない。裸になって恥ずかしいところも見せているのに、くちづけを交わすだけでも、実は、ファーストキスの時くらいどきどきしている。
数歩前を歩く環が小声でなにか言ったようだが、壮五の気が逸れていたからか、それとも、彼の声が小さかったからか、聞き取ることができなかった。
「どうしたの?」
二、三歩、大股開きで進んで隣に並ぶ。
「さみーなって言った」
「そうだね」
「そ。だから、くっついて歩こ」
互いの腕がくっついている。たったそれだけのことで、心が熱い。
「……そうだね」