打ち明け話
「みなさん、本日はお集まりくださり、誠にありがとうございます!」
ナギの声に、壮五は視線だけを動かしてこの場に集まった面々を見遣る。IDOLiSH7・TRIGGER・Re:valeが勢揃いしていて……あぁ、これはいつぞやの、大和が三月と殴り合いまでして一時的に寮を出た時と同じではないか。
「大和さんといい、壮五も随分と腹くくったなぁ」
「違うんです三月さん! 僕は……」
「OH……本当はシャチョーさんもお招きしたかったのですが、第一回ヤマトの打ち明け話会同様、ご予定があると言われました……」
残念だと眉を八の字に下げているが、こちらとしてはこの人数でも勘弁してほしいくらいだ。どうしてこんなことに。
「なぁ、そーちゃん。これって」
「環くんは黙って」
壮五の頭の中は、今、この場をどう切り抜けるかということでいっぱいだ。できるだけ穏便に、かつ、当たり障りのない説明で全員を納得させて終わらせたい。
「それでは、第二回ソウゴの打ち明け話会を始めます。さぁ、ソウゴ。プリーズ」
「おい、第一回はいつあったんだよ」
ソファーに背をあずけていた楽が身を起こした。
「恐らく、逢坂さんが作曲に挑戦したいと私たちに話してくださったことかと」
「なんだそれ、俺たちは聞いてねぇぞ。おい逢坂、作曲するのか?」
楽に尋ねられ、壮五は身をかたくした。
「えっ、作曲……したい、と思ってます。まだまだ勉強中の身ですが」
「そーちゃんのつくった曲で、俺らが歌う」
そのまま作曲に関する話が始まりそうなところで、天が手を叩いた。
「ちょっと、話を逸らさないで。それは第一回なんでしょう? 第二回打ち明け話を早くして。ボクたちも暇じゃない」
ソファーに座っているものの、壮五の心境としては正座をしているようなものだ。
(あぁ、どうしよう)
冷房が効いた小鳥遊寮の共有スペースにいるというのに、こめかみを汗が伝う。膝の上にある拳に力を込めた。
「ソウ、そんなにかたくなるな。さっさと吐いたほうが気分が楽だぞ」
「自分もなかなか言い出せなくて僕が話したの、大和くんはもう忘れた?」
「ダーリン、大和が涙目になってる」
あぁ、そんなこともあったっけ……そういえばその時はたいしたことないという大和に対して、壮五と陸が何気ない疑問をぶつけてしまったのだった。まさか、自分がこの立場になるとは。――壮五は数ヶ月前におこなわれた第一回大和の打ち明け話会を思い出していた。できればこのまま、過去の思い出に浸って時間をやり過ごしたい。
「あのさ、そーちゃんが言いにくいんなら、俺が言う」
右腕をぴっと挙げて環が口を開いた。
「OH……仕方ありません。急遽、第一回タマキの打ち上げ話会に変更しましょう」
「四葉は第一回なのか」
楽に向き直って頷き、その場で立ち上がった環を見て、壮五は我に返る。
「環くん! これは僕に課せられたものだ! それに、黙ってって言ったじゃないか!」
「でもそーちゃんに任せてたら一生終わんねえし、てんてん忙しいって言うし」
「ボクを引き合いに出さないで」
天の言葉がぴしゃりと突き刺さり、環は一瞬、黙ってしまう。
「~~っ、とにかく! これはそーちゃんだけの問題じゃなくて、俺とそーちゃんのことだから。そーちゃんにはなんでも言えっていっつも言ってっけど、みんなに言うのに困ってるから、俺が助けてやんよ」
ひゅう、と冷やかすような口笛が鳴った。
「タマ、やるじゃん」
「ふん、まぁな。カレシの見せ場ってやつ」
「環くん!」
ふふんと得意気に笑う環をよそに、その場に沈黙が訪れる。壮五は頭を抱えた。
(今の発言で僕たちの関係が知られてしまったも同然じゃないか……)
どうしてこの世界には時間を戻す魔法がないのだろう。叔父が生きていた頃に戻してほしいなんて贅沢は言わない。そこまで時間を戻してしまったら、この仲間たちと、自分の隣で得意気にしている相方であり恋人と巡り会う今の時間に辿り着けなくなってしまうかもしれないからだ。でも、せめて、ほんの二分ほど前……いや、この打ち明け話会が企画される前まで時間を戻してほしい。
「えっ、環が彼氏って? 環、恋人いたんだ?」
沈黙を破ったのは陸の明るい声。
「今の流れ、どう考えても相手は逢坂さんってわかるでしょう」
「そうなの?」
きょとんとする陸に、それよりも大きな声で楽が反応する。
「まじか!」
「えっ、楽も気付いてなかったの? 鈍感過ぎない?」
隣で声を上げた楽を、天が鼻で笑った。
「まぁまぁ、天。俺も環くんと壮五くんが親密なのは知ってたけど、そういう関係だってことは今やっと気付いたくらいだし」
「はぁ……TRIGGERの大人二人がそんな鈍感じゃこの先が心配」
「は? なんでだよ。四葉と逢坂がデキてることに気付けたか気付けなかったかと、俺たちの未来は関係ねぇだろ。俺たちの未来は俺たちで掴む。なぁ、そうだろ?」
そこから楽と天が言い合いを始め、龍之介が間に入って宥める。
「はは、TRIGGERは相っ変わらずだなぁ。おいミツ、ビール飲もうぜ」
「はぁ? 昼間っからかよ」
「だってさ~、お兄さん、カップルの交際宣言なんて素面で見てられないのよ」
話が散らかっていくのを見ながら、壮五はこの場をどう収めるべきかと頭を悩ませた。
「オレとユキは、なんとなくそうかなーって思ってたんだよねー」
「そうね」
そう、この打ち明け話会というのは、環と壮五の関係にいち早く気付いたナギが、薄々勘付いている者も複数いるようだから、明言しておいたほうが互いにすっきりするのではないかと壮五に持ちかけたものだった。
「はは、ぐだぐだじゃん。ウケる」
「ウケないよ! ……あぁ、もうどうにでもしてくれ。ナギくん、介錯をお願いするよ」
真顔でナギに詰め寄る壮五を、環が押さえ込む。
「あぁ~! そーちゃんやめろって!」
かくして、ナギが企画した打ち明け話会は、大和の時と同じく、主役よりもその関係者が口を開く展開となったのであった。
ナギの声に、壮五は視線だけを動かしてこの場に集まった面々を見遣る。IDOLiSH7・TRIGGER・Re:valeが勢揃いしていて……あぁ、これはいつぞやの、大和が三月と殴り合いまでして一時的に寮を出た時と同じではないか。
「大和さんといい、壮五も随分と腹くくったなぁ」
「違うんです三月さん! 僕は……」
「OH……本当はシャチョーさんもお招きしたかったのですが、第一回ヤマトの打ち明け話会同様、ご予定があると言われました……」
残念だと眉を八の字に下げているが、こちらとしてはこの人数でも勘弁してほしいくらいだ。どうしてこんなことに。
「なぁ、そーちゃん。これって」
「環くんは黙って」
壮五の頭の中は、今、この場をどう切り抜けるかということでいっぱいだ。できるだけ穏便に、かつ、当たり障りのない説明で全員を納得させて終わらせたい。
「それでは、第二回ソウゴの打ち明け話会を始めます。さぁ、ソウゴ。プリーズ」
「おい、第一回はいつあったんだよ」
ソファーに背をあずけていた楽が身を起こした。
「恐らく、逢坂さんが作曲に挑戦したいと私たちに話してくださったことかと」
「なんだそれ、俺たちは聞いてねぇぞ。おい逢坂、作曲するのか?」
楽に尋ねられ、壮五は身をかたくした。
「えっ、作曲……したい、と思ってます。まだまだ勉強中の身ですが」
「そーちゃんのつくった曲で、俺らが歌う」
そのまま作曲に関する話が始まりそうなところで、天が手を叩いた。
「ちょっと、話を逸らさないで。それは第一回なんでしょう? 第二回打ち明け話を早くして。ボクたちも暇じゃない」
ソファーに座っているものの、壮五の心境としては正座をしているようなものだ。
(あぁ、どうしよう)
冷房が効いた小鳥遊寮の共有スペースにいるというのに、こめかみを汗が伝う。膝の上にある拳に力を込めた。
「ソウ、そんなにかたくなるな。さっさと吐いたほうが気分が楽だぞ」
「自分もなかなか言い出せなくて僕が話したの、大和くんはもう忘れた?」
「ダーリン、大和が涙目になってる」
あぁ、そんなこともあったっけ……そういえばその時はたいしたことないという大和に対して、壮五と陸が何気ない疑問をぶつけてしまったのだった。まさか、自分がこの立場になるとは。――壮五は数ヶ月前におこなわれた第一回大和の打ち明け話会を思い出していた。できればこのまま、過去の思い出に浸って時間をやり過ごしたい。
「あのさ、そーちゃんが言いにくいんなら、俺が言う」
右腕をぴっと挙げて環が口を開いた。
「OH……仕方ありません。急遽、第一回タマキの打ち上げ話会に変更しましょう」
「四葉は第一回なのか」
楽に向き直って頷き、その場で立ち上がった環を見て、壮五は我に返る。
「環くん! これは僕に課せられたものだ! それに、黙ってって言ったじゃないか!」
「でもそーちゃんに任せてたら一生終わんねえし、てんてん忙しいって言うし」
「ボクを引き合いに出さないで」
天の言葉がぴしゃりと突き刺さり、環は一瞬、黙ってしまう。
「~~っ、とにかく! これはそーちゃんだけの問題じゃなくて、俺とそーちゃんのことだから。そーちゃんにはなんでも言えっていっつも言ってっけど、みんなに言うのに困ってるから、俺が助けてやんよ」
ひゅう、と冷やかすような口笛が鳴った。
「タマ、やるじゃん」
「ふん、まぁな。カレシの見せ場ってやつ」
「環くん!」
ふふんと得意気に笑う環をよそに、その場に沈黙が訪れる。壮五は頭を抱えた。
(今の発言で僕たちの関係が知られてしまったも同然じゃないか……)
どうしてこの世界には時間を戻す魔法がないのだろう。叔父が生きていた頃に戻してほしいなんて贅沢は言わない。そこまで時間を戻してしまったら、この仲間たちと、自分の隣で得意気にしている相方であり恋人と巡り会う今の時間に辿り着けなくなってしまうかもしれないからだ。でも、せめて、ほんの二分ほど前……いや、この打ち明け話会が企画される前まで時間を戻してほしい。
「えっ、環が彼氏って? 環、恋人いたんだ?」
沈黙を破ったのは陸の明るい声。
「今の流れ、どう考えても相手は逢坂さんってわかるでしょう」
「そうなの?」
きょとんとする陸に、それよりも大きな声で楽が反応する。
「まじか!」
「えっ、楽も気付いてなかったの? 鈍感過ぎない?」
隣で声を上げた楽を、天が鼻で笑った。
「まぁまぁ、天。俺も環くんと壮五くんが親密なのは知ってたけど、そういう関係だってことは今やっと気付いたくらいだし」
「はぁ……TRIGGERの大人二人がそんな鈍感じゃこの先が心配」
「は? なんでだよ。四葉と逢坂がデキてることに気付けたか気付けなかったかと、俺たちの未来は関係ねぇだろ。俺たちの未来は俺たちで掴む。なぁ、そうだろ?」
そこから楽と天が言い合いを始め、龍之介が間に入って宥める。
「はは、TRIGGERは相っ変わらずだなぁ。おいミツ、ビール飲もうぜ」
「はぁ? 昼間っからかよ」
「だってさ~、お兄さん、カップルの交際宣言なんて素面で見てられないのよ」
話が散らかっていくのを見ながら、壮五はこの場をどう収めるべきかと頭を悩ませた。
「オレとユキは、なんとなくそうかなーって思ってたんだよねー」
「そうね」
そう、この打ち明け話会というのは、環と壮五の関係にいち早く気付いたナギが、薄々勘付いている者も複数いるようだから、明言しておいたほうが互いにすっきりするのではないかと壮五に持ちかけたものだった。
「はは、ぐだぐだじゃん。ウケる」
「ウケないよ! ……あぁ、もうどうにでもしてくれ。ナギくん、介錯をお願いするよ」
真顔でナギに詰め寄る壮五を、環が押さえ込む。
「あぁ~! そーちゃんやめろって!」
かくして、ナギが企画した打ち明け話会は、大和の時と同じく、主役よりもその関係者が口を開く展開となったのであった。