彼シャツ未遂
まだ起きたくない、けど、起きそう。この季節になると布団が恋し過ぎてもう五分でいいから寝かせて〜ってなる。寝起きすぐは頭まわらないけど、冬じゃなかったら早起き自体は平気なほうなのに。
「う……寒……」
素肌に触れるシーツや布団の感触で、昨日は下着のパンツだけ穿いてそのまま寝ちゃったことに気付く。服、着なきゃ。でもまだもう少し、ここでごろごろしてたい。
首まで布団に入ったまま、もぞもぞと寝返りを打つ。……そういえば、いつの間にか、背中向けちゃってたみたい。可不可が眉間にしわを寄せたまま寝てる。一緒に寝てるんだから、俺の寝相がちょっとくらい悪くても、許してほしいな。
くしゃみが出そうになって、慌てて鼻を押さえた。可不可のこと、もう少し寝かせてあげたい。……というのは建前で、寝顔を見てたいっていうのが本音。だって、俺が先に起きたの、ふたりでくっついて眠るようになってからは初めてだから。いつもは可不可が先に起きて、俺が目を覚ますまで、ずーっと俺の顔を見てるらしい。そんなに何度も見たくなるような寝顔してるとは思えないんだけど。
「……」
よくない。これはよくない。好きなひとの寝顔って、こんなに破壊力あるんだ? 見てるだけで頬とか触りたくなるし、キスしたら起きるのかなとか考えちゃう。考えたら、やってみたくなる。……ううん、寝込みを襲うなんてだめだよ、絶対。可不可は俺にそんなことしないんだから、俺もちゃんとしなきゃ。
昨日あんなにくっついたのに、また変な気分になりそう。ちょっと冷静になろう。起こさないようにして、顔でも洗ってこよう。
手探りでシャツを探す。脱がせ合った寝間着、そのへんでくしゃくしゃになってるはずなんだよね。いつもはそんなことないんだけど、昨日はちょっと久しぶりで、お互いに余裕がなかった。
灯りをつけて起こすのもだめ。布団のなかをぺたぺた、手を這わせる。――あった。シャツの袖だ。上下とも見つけたかったけど、下着は穿いてるし、部屋の洗面所で顔を洗うくらいだからシャツさえあればいい。そうっと、そうっと右腕を袖に通して、――
「……?」
――反対の腕を通して、違和感を抱く。なんか、肩幅がちょっと小さい。っていうかこれ、可不可のじゃない?
思わず飛び起きて、自分の姿を見下ろす。あああ……やっぱり。ごめん可不可、恋人とはいえ、勝手に着られるのはいやだよね。でも、でも、うっかりとはいえ、夕べ可不可が着てた寝間着だ、これを俺は脱がせたんだって思うと、……ごめん、普通にどきどきする。すぐ脱がなきゃって思うのに、ちょっとくらいいいよねなんて、心のなかで天使と悪魔がバトルし始めた。
「ひっ……!?」
背中にひたっとなにかが触れる感触がした。なにかって、ひとつしかない。
「楓ちゃんって、彼シャツとか興味あるタイプだったんだ?」
今の俺に効果音をつけたら、ギ、ギ、ギ……って鳴ってると思う。恐る恐る振り返ると、どう考えても起きたてほやほやとは思えない可不可が笑ってた。
「……起きてたの? いつから?」
静かにしなきゃとは思いつつ、結構もぞもぞした自覚はある。普通、起きるよね。
「楓ちゃんが寝返りを打ってくれたところから知ってるよ」
「最初から起きてたなら言って!」
俺が起きるより先に起きてたんじゃん。ひどいよ、なにもかも見てるなんて。
「ん、ちょっと、なに」
うなじ、背中、肩へと、可不可がくちびるを押し当ててきた。よくない、これはよくないよ。
「きれいな肌、恋人の前でさらしちゃって。キスしてってことでしょ?」
「違、あ、ちょっとどこ触って」
後ろから抱き着かれる体勢で、可不可の指先が俺の弱いところを掠めた。
「いつもより早起きだし、最後まではしなくても、これくらいならできそうじゃない?」
前傾姿勢で膝を擦り合わせたの、絶対にばれてる。くっついて寝て、翌朝もこういう雰囲気になるなんて初めてなんだけど、これ、すっごくよくない。
「……だめだよ、可不可」
「だめ? 気分じゃない?」
「じゃなくて……し、したくなる、から」
うそ。本当はもうとっくに、したくなってる。腰のあたりに感じる熱を、夕べたくさん甘やかされたところが、ほしいっていってる。
「う……寒……」
素肌に触れるシーツや布団の感触で、昨日は下着のパンツだけ穿いてそのまま寝ちゃったことに気付く。服、着なきゃ。でもまだもう少し、ここでごろごろしてたい。
首まで布団に入ったまま、もぞもぞと寝返りを打つ。……そういえば、いつの間にか、背中向けちゃってたみたい。可不可が眉間にしわを寄せたまま寝てる。一緒に寝てるんだから、俺の寝相がちょっとくらい悪くても、許してほしいな。
くしゃみが出そうになって、慌てて鼻を押さえた。可不可のこと、もう少し寝かせてあげたい。……というのは建前で、寝顔を見てたいっていうのが本音。だって、俺が先に起きたの、ふたりでくっついて眠るようになってからは初めてだから。いつもは可不可が先に起きて、俺が目を覚ますまで、ずーっと俺の顔を見てるらしい。そんなに何度も見たくなるような寝顔してるとは思えないんだけど。
「……」
よくない。これはよくない。好きなひとの寝顔って、こんなに破壊力あるんだ? 見てるだけで頬とか触りたくなるし、キスしたら起きるのかなとか考えちゃう。考えたら、やってみたくなる。……ううん、寝込みを襲うなんてだめだよ、絶対。可不可は俺にそんなことしないんだから、俺もちゃんとしなきゃ。
昨日あんなにくっついたのに、また変な気分になりそう。ちょっと冷静になろう。起こさないようにして、顔でも洗ってこよう。
手探りでシャツを探す。脱がせ合った寝間着、そのへんでくしゃくしゃになってるはずなんだよね。いつもはそんなことないんだけど、昨日はちょっと久しぶりで、お互いに余裕がなかった。
灯りをつけて起こすのもだめ。布団のなかをぺたぺた、手を這わせる。――あった。シャツの袖だ。上下とも見つけたかったけど、下着は穿いてるし、部屋の洗面所で顔を洗うくらいだからシャツさえあればいい。そうっと、そうっと右腕を袖に通して、――
「……?」
――反対の腕を通して、違和感を抱く。なんか、肩幅がちょっと小さい。っていうかこれ、可不可のじゃない?
思わず飛び起きて、自分の姿を見下ろす。あああ……やっぱり。ごめん可不可、恋人とはいえ、勝手に着られるのはいやだよね。でも、でも、うっかりとはいえ、夕べ可不可が着てた寝間着だ、これを俺は脱がせたんだって思うと、……ごめん、普通にどきどきする。すぐ脱がなきゃって思うのに、ちょっとくらいいいよねなんて、心のなかで天使と悪魔がバトルし始めた。
「ひっ……!?」
背中にひたっとなにかが触れる感触がした。なにかって、ひとつしかない。
「楓ちゃんって、彼シャツとか興味あるタイプだったんだ?」
今の俺に効果音をつけたら、ギ、ギ、ギ……って鳴ってると思う。恐る恐る振り返ると、どう考えても起きたてほやほやとは思えない可不可が笑ってた。
「……起きてたの? いつから?」
静かにしなきゃとは思いつつ、結構もぞもぞした自覚はある。普通、起きるよね。
「楓ちゃんが寝返りを打ってくれたところから知ってるよ」
「最初から起きてたなら言って!」
俺が起きるより先に起きてたんじゃん。ひどいよ、なにもかも見てるなんて。
「ん、ちょっと、なに」
うなじ、背中、肩へと、可不可がくちびるを押し当ててきた。よくない、これはよくないよ。
「きれいな肌、恋人の前でさらしちゃって。キスしてってことでしょ?」
「違、あ、ちょっとどこ触って」
後ろから抱き着かれる体勢で、可不可の指先が俺の弱いところを掠めた。
「いつもより早起きだし、最後まではしなくても、これくらいならできそうじゃない?」
前傾姿勢で膝を擦り合わせたの、絶対にばれてる。くっついて寝て、翌朝もこういう雰囲気になるなんて初めてなんだけど、これ、すっごくよくない。
「……だめだよ、可不可」
「だめ? 気分じゃない?」
「じゃなくて……し、したくなる、から」
うそ。本当はもうとっくに、したくなってる。腰のあたりに感じる熱を、夕べたくさん甘やかされたところが、ほしいっていってる。