キミを永久指名
*2025/4/1公開エイプリルフール特別ストーリー『20羽のラビホスもふもふハーレム』のような世界で、可不可はエース、楓がラビホス(ウサギのすがた)
「お兄さん、お仕事お探し……あっ、すんません」
僕たちを見ても適当な謝罪だけってことは、最近この町に来たスカウトくんだったのかな。ここでスカウトするなら、三大ホスクラのオーナーとラビホス、そのエースの顔は必修科目のはずだけど。まぁ、同伴中ってことにすら気付かず声をかけるようじゃ、明日には消えてるだろうね。
「KAEDEちゃんの顔も知らないなんて」
「可不可は俺のこと持ち上げ過ぎじゃない? 俺、普通のラビホスだよ」
「まぁ、今まさに文字どおり持ち上げてるけどね」
腕のなかにいる大好きな担当を見下ろす。黒くつやつやとした毛並みとやわらかなブラウン混じりの瞳といえば、この町で知らない者はいない。
「いつも思うんだけど……俺の出勤日全部同伴とアフターしてて大丈夫?」
「あはは、キミの立場でそれを言うの?」
ラビホスのわりに、この子は入店当初からずっと謙虚だ。まぁ、初日にすぐ目をつけた僕がそのまま永久指名してエースを張ってるだけあって、一年目から億プレイヤーなんだけど。
「……こんなに一緒にいるのに、可不可は仕事辞めてって言わないよね」
「キミの、来てくれたひとを笑顔にしたいっていう願いを尊重してるから」
もちろん、僕だけのものになってくれるなら、いつでも大歓迎だよ。一生、生活に困らせない自信あるし。――そう答えると、KAEDEちゃんが頭を擦り寄せてきた。
「だから、可不可のこと信頼できるんだ。あ、今のは営業じゃないよ」
「わかってる。キミはそういうのしないというか、できないタイプだからね」
そういうところが大好きなんだよ。囁くように声を落とすと、KAEDEちゃんの耳がぴくっと震えた。本人は隠してるつもりだろうけど、この子、耳が弱いみたいなんだよね。その上、僕の声が好みみたい。もしかして、僕以上に、この子のほうが本気になってくれてたりして。そうじゃなきゃ〝仕事辞めてって言わないよね〟なんてジャブ打ってこないでしょ。
まぁ、僕はひと目見たときから本気も本気で、この子がこの仕事をしてるあいだは全力でエースを張らせてもらうし、この子が自分の意志で仕事を辞めたあとは、生涯のパートナーとして迎えるつもり。
その前に、この子の関心をもうちょっと僕に傾けさせたい。被りのことは監視しつつある程度までは許容するよう心掛けてるけど、この子にウサギモデルの仕事を紹介しようと画策してるひとがいるってうわさで聞いたんだよね。まったく、朔次郎は執事として有能過ぎるよ。情報収集まで完璧だなんて。
「最近、新しい事業を始めようと思ってるんだ。HAMAの観光業をディレクションしたり、社員自ら観光客をおもてなししたりっていう旅行会社なんだけど」
「え! なにそれ、すごいね! 可不可はすっごく頭もいいし、思いやりのあるひとだから、向いてると思う!」
思いやりかぁ。それはキミに対して全振りしてるから、僕自身は別に優しい人間じゃないんだけどなぁ。……まぁ、いいか。
「それで、何人かのラビホスには、今のお仕事と兼任で、おもてなしの面でのサポートをお願いしようかなって考えてる。もちろん、キミにもね」
「俺? できるかなぁ」
「できるできる。キミにこそ向いてるよ」
なんといっても、僕を筆頭に、たくさんのひとたちをおもてなししてるラビホス界のトップだからね。それに、この誘いは、将来――いつか、この子がお店を辞めようと決めたあと――への布石でもある。
「今の仕事に支障をきたさないなら、やってみたいな」
もちろん、オーナーがいいって言ったらの話だけどね! とKAEDEちゃんが笑った。そのあたりは抜かりないから安心してよ。僕が得意げに言うと「さっすが可不可!」と褒めてくれた。僕だって、ただエースを張ってるだけじゃない。経営陣の懐に入るくらい、朝飯前だよ。
「じゃあ、HAMAの夜だけじゃなく、昼も元気にする仕事のお手伝いに、キミを永久指名させてくれる?」
「あはは、夜も昼も永久指名されちゃった! これじゃあ、俺の一生を永久指名されたみたいだね」
「もちろん、そのつもりだよ」
「お兄さん、お仕事お探し……あっ、すんません」
僕たちを見ても適当な謝罪だけってことは、最近この町に来たスカウトくんだったのかな。ここでスカウトするなら、三大ホスクラのオーナーとラビホス、そのエースの顔は必修科目のはずだけど。まぁ、同伴中ってことにすら気付かず声をかけるようじゃ、明日には消えてるだろうね。
「KAEDEちゃんの顔も知らないなんて」
「可不可は俺のこと持ち上げ過ぎじゃない? 俺、普通のラビホスだよ」
「まぁ、今まさに文字どおり持ち上げてるけどね」
腕のなかにいる大好きな担当を見下ろす。黒くつやつやとした毛並みとやわらかなブラウン混じりの瞳といえば、この町で知らない者はいない。
「いつも思うんだけど……俺の出勤日全部同伴とアフターしてて大丈夫?」
「あはは、キミの立場でそれを言うの?」
ラビホスのわりに、この子は入店当初からずっと謙虚だ。まぁ、初日にすぐ目をつけた僕がそのまま永久指名してエースを張ってるだけあって、一年目から億プレイヤーなんだけど。
「……こんなに一緒にいるのに、可不可は仕事辞めてって言わないよね」
「キミの、来てくれたひとを笑顔にしたいっていう願いを尊重してるから」
もちろん、僕だけのものになってくれるなら、いつでも大歓迎だよ。一生、生活に困らせない自信あるし。――そう答えると、KAEDEちゃんが頭を擦り寄せてきた。
「だから、可不可のこと信頼できるんだ。あ、今のは営業じゃないよ」
「わかってる。キミはそういうのしないというか、できないタイプだからね」
そういうところが大好きなんだよ。囁くように声を落とすと、KAEDEちゃんの耳がぴくっと震えた。本人は隠してるつもりだろうけど、この子、耳が弱いみたいなんだよね。その上、僕の声が好みみたい。もしかして、僕以上に、この子のほうが本気になってくれてたりして。そうじゃなきゃ〝仕事辞めてって言わないよね〟なんてジャブ打ってこないでしょ。
まぁ、僕はひと目見たときから本気も本気で、この子がこの仕事をしてるあいだは全力でエースを張らせてもらうし、この子が自分の意志で仕事を辞めたあとは、生涯のパートナーとして迎えるつもり。
その前に、この子の関心をもうちょっと僕に傾けさせたい。被りのことは監視しつつある程度までは許容するよう心掛けてるけど、この子にウサギモデルの仕事を紹介しようと画策してるひとがいるってうわさで聞いたんだよね。まったく、朔次郎は執事として有能過ぎるよ。情報収集まで完璧だなんて。
「最近、新しい事業を始めようと思ってるんだ。HAMAの観光業をディレクションしたり、社員自ら観光客をおもてなししたりっていう旅行会社なんだけど」
「え! なにそれ、すごいね! 可不可はすっごく頭もいいし、思いやりのあるひとだから、向いてると思う!」
思いやりかぁ。それはキミに対して全振りしてるから、僕自身は別に優しい人間じゃないんだけどなぁ。……まぁ、いいか。
「それで、何人かのラビホスには、今のお仕事と兼任で、おもてなしの面でのサポートをお願いしようかなって考えてる。もちろん、キミにもね」
「俺? できるかなぁ」
「できるできる。キミにこそ向いてるよ」
なんといっても、僕を筆頭に、たくさんのひとたちをおもてなししてるラビホス界のトップだからね。それに、この誘いは、将来――いつか、この子がお店を辞めようと決めたあと――への布石でもある。
「今の仕事に支障をきたさないなら、やってみたいな」
もちろん、オーナーがいいって言ったらの話だけどね! とKAEDEちゃんが笑った。そのあたりは抜かりないから安心してよ。僕が得意げに言うと「さっすが可不可!」と褒めてくれた。僕だって、ただエースを張ってるだけじゃない。経営陣の懐に入るくらい、朝飯前だよ。
「じゃあ、HAMAの夜だけじゃなく、昼も元気にする仕事のお手伝いに、キミを永久指名させてくれる?」
「あはは、夜も昼も永久指名されちゃった! これじゃあ、俺の一生を永久指名されたみたいだね」
「もちろん、そのつもりだよ」