いちばんだいじ
「なぁ、そーちゃん」
新曲の歌詞を見た時から、訊きたくて、たまらなかった。甘えた声で呼ぶと、壮五は目を瞬かせて「なに?」と、環の言葉を待ってくれる。
「一番大事が恋ってあるじゃん。前に、そーちゃん、俺のこと、一番大事って言った。じゃあ、そーちゃんは俺に恋してるってこと?」
「え? 違うけど……?」
間を置かず、あっけらかんと返された言葉に、環は開いた口が塞がらない。
「えっ、だって」
「あの問題においてはきみが一番大事、最優先事項だったから、それを正直に言ったまでのことで……」
――きみが一番大事だ! この問題について!
TRIGGERのためにFSCホールを借りる交渉をすべく、逢坂家に向かおうと決心した壮五が放った言葉だ。実家に向かい、父親と対峙するつもりだが、その行動が環を傷付けるなら、しない。だって、傷付けたくないから。壮五はそうも言っていた。
「そりゃあ、きみとは一緒にいることが多いし、仲間という言葉ではもはや言い表せられないくらい、友愛の情を抱いてるのは確かだけど」
友愛。その言葉で、環のこめかみに青筋が浮かぶ。
「……ふざっけんなよ! 友愛でこういうことするかよ!」
「あっ、ちょっと、どこ触って」
さきほどまで環を受け入れていたところに指を突き立てると、壮五から甘い声が上がった。ここをこんなふうにしているくせに、こんなことを許しているくせに、友愛? 友愛とかいう相手に、そんな声を聞かせるのか?
「あんたは、俺に惚れてんの。恋してんの。いい加減認めて」
不健全極まりない関係に、時々、どうしようと心の中で呟いている。
きっかけは、MEZZO”の仕事でホテルに宿泊した夜の、事故みたいなもの。
それ以来、環と壮五は定期的に体を重ねるようになった。初めて体を重ねた日、肌に触れられる寸前に「好き」と告げられて、本当は天にも昇る心地だったのだが、ずるい自分は曖昧に笑って誤魔化し、快楽だけを追わせた。セックスの最中も、すべてを終えてからも、むせ返るほど甘ったるい言葉が降ってきて、その味を一度限りにはしたくないと感じた壮五は「好きじゃなきゃ、こういうことはしないよ」と微笑んだ。
しかし、二人の関係は今も相方である。もちろん環は交際を望んだし、壮五もまた、心の中では恋人になりたいと憧れたけれど、いつか終わるかもしれない恋より、ずっと変わらないであろう相方を選んだ。
環の性格を考えれば、離さないでと瞳を潤ませるだけで山ほどの愛情をそそいでくれるに違いない。本当はひとりじめしたいんだとかわいく頬を膨らませれば、アイドルじゃない俺はそーちゃんだけのものだよと、世の女性がほしがる言葉をすぐにくれるだろう。でも、そんなことができるかわいい性格はしていないから、好きでなければこんなことはしないとしか言えないまま、今夜も環に抱かれている。
「考えごとするとか、ヨユーじゃん」
体を暴く動きがいっそう激しくなり、壮五の思考は掻き混ぜられ、目の前の体にしがみついて嬌声を上げるしかできなくなった。彼はかしこいから、友愛の言葉で誤魔化す壮五の本心なんて、とうに察しているのだろう。体を暴きながら、どうか心も暴かれてと訴えかけてくるのは、彼が優しいだけの男ではなく、真面目だから。
焦らすつもりなのか、わざと弱々しい刺激へと変わった。普段はおとなしくしている壮五だが、その実、好きな人といやらしいことをするのが音楽の次に好きなくらいには快楽に弱いから、焦らされるとものたりない。ぐちゃぐちゃに掻き回された壮五の脳は、はしたない言葉で環におねだりしろと指示を出す。
「環くん、もっと――して」
しがみつく手足に力を込めて、自分なりのいやらしい声でおねだりをした。この声音と言葉なら、彼はいつも顔を真っ赤にして、余裕をなくしてくれるから。両手で数えきれないほど抱かれた壮五は、自分が前後不覚の状態であっても、環の理性をひとことで崩せる自信があった。
「だぁめ。そーちゃんが、ちゃんと本当のこと言ったらな」
子どものくせに、なんてずるいことを言うんだ。環に際限なく愛されることを望む体になってしまっているから、そんな条件を出されると、負けてしまうじゃないか。
「……高校生のくせに、なまいき」
「高校生だけど、あんたといるために大人になってんだよ、俺は。だから早く答えて」
新曲の歌詞を見た時から、訊きたくて、たまらなかった。甘えた声で呼ぶと、壮五は目を瞬かせて「なに?」と、環の言葉を待ってくれる。
「一番大事が恋ってあるじゃん。前に、そーちゃん、俺のこと、一番大事って言った。じゃあ、そーちゃんは俺に恋してるってこと?」
「え? 違うけど……?」
間を置かず、あっけらかんと返された言葉に、環は開いた口が塞がらない。
「えっ、だって」
「あの問題においてはきみが一番大事、最優先事項だったから、それを正直に言ったまでのことで……」
――きみが一番大事だ! この問題について!
TRIGGERのためにFSCホールを借りる交渉をすべく、逢坂家に向かおうと決心した壮五が放った言葉だ。実家に向かい、父親と対峙するつもりだが、その行動が環を傷付けるなら、しない。だって、傷付けたくないから。壮五はそうも言っていた。
「そりゃあ、きみとは一緒にいることが多いし、仲間という言葉ではもはや言い表せられないくらい、友愛の情を抱いてるのは確かだけど」
友愛。その言葉で、環のこめかみに青筋が浮かぶ。
「……ふざっけんなよ! 友愛でこういうことするかよ!」
「あっ、ちょっと、どこ触って」
さきほどまで環を受け入れていたところに指を突き立てると、壮五から甘い声が上がった。ここをこんなふうにしているくせに、こんなことを許しているくせに、友愛? 友愛とかいう相手に、そんな声を聞かせるのか?
「あんたは、俺に惚れてんの。恋してんの。いい加減認めて」
不健全極まりない関係に、時々、どうしようと心の中で呟いている。
きっかけは、MEZZO”の仕事でホテルに宿泊した夜の、事故みたいなもの。
それ以来、環と壮五は定期的に体を重ねるようになった。初めて体を重ねた日、肌に触れられる寸前に「好き」と告げられて、本当は天にも昇る心地だったのだが、ずるい自分は曖昧に笑って誤魔化し、快楽だけを追わせた。セックスの最中も、すべてを終えてからも、むせ返るほど甘ったるい言葉が降ってきて、その味を一度限りにはしたくないと感じた壮五は「好きじゃなきゃ、こういうことはしないよ」と微笑んだ。
しかし、二人の関係は今も相方である。もちろん環は交際を望んだし、壮五もまた、心の中では恋人になりたいと憧れたけれど、いつか終わるかもしれない恋より、ずっと変わらないであろう相方を選んだ。
環の性格を考えれば、離さないでと瞳を潤ませるだけで山ほどの愛情をそそいでくれるに違いない。本当はひとりじめしたいんだとかわいく頬を膨らませれば、アイドルじゃない俺はそーちゃんだけのものだよと、世の女性がほしがる言葉をすぐにくれるだろう。でも、そんなことができるかわいい性格はしていないから、好きでなければこんなことはしないとしか言えないまま、今夜も環に抱かれている。
「考えごとするとか、ヨユーじゃん」
体を暴く動きがいっそう激しくなり、壮五の思考は掻き混ぜられ、目の前の体にしがみついて嬌声を上げるしかできなくなった。彼はかしこいから、友愛の言葉で誤魔化す壮五の本心なんて、とうに察しているのだろう。体を暴きながら、どうか心も暴かれてと訴えかけてくるのは、彼が優しいだけの男ではなく、真面目だから。
焦らすつもりなのか、わざと弱々しい刺激へと変わった。普段はおとなしくしている壮五だが、その実、好きな人といやらしいことをするのが音楽の次に好きなくらいには快楽に弱いから、焦らされるとものたりない。ぐちゃぐちゃに掻き回された壮五の脳は、はしたない言葉で環におねだりしろと指示を出す。
「環くん、もっと――して」
しがみつく手足に力を込めて、自分なりのいやらしい声でおねだりをした。この声音と言葉なら、彼はいつも顔を真っ赤にして、余裕をなくしてくれるから。両手で数えきれないほど抱かれた壮五は、自分が前後不覚の状態であっても、環の理性をひとことで崩せる自信があった。
「だぁめ。そーちゃんが、ちゃんと本当のこと言ったらな」
子どものくせに、なんてずるいことを言うんだ。環に際限なく愛されることを望む体になってしまっているから、そんな条件を出されると、負けてしまうじゃないか。
「……高校生のくせに、なまいき」
「高校生だけど、あんたといるために大人になってんだよ、俺は。だから早く答えて」