もうちょっとだけ夜更かし
そんなにめちゃくちゃ暴れたわけじゃないけど、そこそこ出ちゃった汗とかいろんなものをタオルで拭って、今夜はもう寝るだけの状態。いつもみたいにそーちゃんを抱っこしたまんま寝っ転がって、風邪引かせないように布団にくるまって、眠気が迎えにくるのを待ってる。
今夜はどっちが先に寝落ちるかな。いつもはそーちゃんが先にうとうとしだすけど、さっき「まだできるのに」って拗ねてたくらいには元気だから、俺が先に寝ちゃうかも。
眠気を待ってるときに限って、考えてもどうしようもないことが頭に浮かぶ。
普段の言葉とか曲の歌詞に結構な頻度で出てくる「ずっと」の三文字って、使われ過ぎて薄っぺらくなってない? 本当の「ずっと」ってもっとしっかりした言葉に置き換えるなら「永遠」ってことで、それはこの世界のまだ誰も見たことないのに。生きてるうちは見れっこない言葉のこと、結構簡単に使っちゃってる。――気付いたら、気になって気になって、しょうがなくなっちゃった。
「……そーちゃんはさ、初めての曲で〝永遠〟選んだよな」
ノースメイアから帰国したあと、そーちゃんは初めて完成させた曲をあちこち手直しして、仮で決めた歌詞もていねいに整えた。せっかくつけてたタイトルなのになんで変えちゃったのって訊いたら「ひとりごとで終わらせたくないんだ。この衝動は、ずっと残しておきたい」って、見たことないくらい強い顔してた。いい意味での強い顔。それがすごく格好よくて、このひとにはずっと敵わないかもって思った。ほら、今の俺もこうやってすぐ「ずっと」って言う。まぁ、一生、敵いっこない気はしてるけど。
「音楽は不老不死になり得る唯一のもの、かもしれないから。そこでならあの曲に込めた祈りも、ずっと守ってもらえる」
誰から? とは訊かなかった。特定の誰かを敵認定してるわけじゃないってのはわかるから。
「そーちゃんの永遠は、祈りってこと?」
曲が出たとき、それまでの新曲以上に、いろんなところから宣伝兼ねたインタビューの仕事があった。曲に込めたもののうち、ファン向けのものは音楽番組とかでも話してたけど、俺が知りたかったのは、そーちゃん自身のこと。自己証明の、もっと具体的な中身。
「たぶん、そうかな。あのときの気持ちを、未来の僕がいつでも振り返れますようにとも思ったし」
「記録なんだ?」
「というか、道標かな。初めて取り組んで、迷ったけど、ひとりごとで……ううん、ひとりよがりで終わらせないって決めたときのことは、僕がこの先、何十曲、何百曲とつくったって忘れない自信がある。でも、どんなに自信があったって迷う日はきっとくるから」
「俺がいても?」
自分でもびっくりするくらい声がこわばってて、そーちゃんが目をまるくした。あーあ、本当は〝何十曲、何百曲とつくったって〟のところに食いつきたかったのに。
赤ちゃん電気がなくても、そーちゃんがどんな顔したかは見える。薄暗いなかでどたばたして目が慣れてるせいもあるけど、こういうことをするようになる前から、そーちゃんとはこの距離でたくさんおしゃべりしてきたから。片想いだった頃よりも更に前から、このひとをちょっとでも多くわかりたくて、きっと、ほかのどんなやつよりも見てきたつもり。
「君といても。環くんのことは誰よりも頼りにしてるけど、頼りきりになるのはまた違うだろ?」
「まぁ、確かに。でもさー、俺としては、一番に頼ってほしいわけ。相方だし、彼氏だし」
「頼りにしてるよ。してなかったら、こんなに甘えてない」
なんか動いたと思ったら、そーちゃんが乗っかってきて、くちびるの先にちゅって吸いついてきた。かわいいけど、もうちょっとしっかりくっつけてくれてもいいのに。
「ものたりない?」
「……たりなくなった」
きっとまた、あとは寝るだけってタイミングでいきなり変なこと考えちゃう日はくる。眠る前の時間って、そういうのを連れてくるのが好きだから。
でも、こんなふうにおしゃべりして、ほんのちょっとだけ夜更かししちゃう夜があるのも、たまには悪くないって思うんだ。
今夜はどっちが先に寝落ちるかな。いつもはそーちゃんが先にうとうとしだすけど、さっき「まだできるのに」って拗ねてたくらいには元気だから、俺が先に寝ちゃうかも。
眠気を待ってるときに限って、考えてもどうしようもないことが頭に浮かぶ。
普段の言葉とか曲の歌詞に結構な頻度で出てくる「ずっと」の三文字って、使われ過ぎて薄っぺらくなってない? 本当の「ずっと」ってもっとしっかりした言葉に置き換えるなら「永遠」ってことで、それはこの世界のまだ誰も見たことないのに。生きてるうちは見れっこない言葉のこと、結構簡単に使っちゃってる。――気付いたら、気になって気になって、しょうがなくなっちゃった。
「……そーちゃんはさ、初めての曲で〝永遠〟選んだよな」
ノースメイアから帰国したあと、そーちゃんは初めて完成させた曲をあちこち手直しして、仮で決めた歌詞もていねいに整えた。せっかくつけてたタイトルなのになんで変えちゃったのって訊いたら「ひとりごとで終わらせたくないんだ。この衝動は、ずっと残しておきたい」って、見たことないくらい強い顔してた。いい意味での強い顔。それがすごく格好よくて、このひとにはずっと敵わないかもって思った。ほら、今の俺もこうやってすぐ「ずっと」って言う。まぁ、一生、敵いっこない気はしてるけど。
「音楽は不老不死になり得る唯一のもの、かもしれないから。そこでならあの曲に込めた祈りも、ずっと守ってもらえる」
誰から? とは訊かなかった。特定の誰かを敵認定してるわけじゃないってのはわかるから。
「そーちゃんの永遠は、祈りってこと?」
曲が出たとき、それまでの新曲以上に、いろんなところから宣伝兼ねたインタビューの仕事があった。曲に込めたもののうち、ファン向けのものは音楽番組とかでも話してたけど、俺が知りたかったのは、そーちゃん自身のこと。自己証明の、もっと具体的な中身。
「たぶん、そうかな。あのときの気持ちを、未来の僕がいつでも振り返れますようにとも思ったし」
「記録なんだ?」
「というか、道標かな。初めて取り組んで、迷ったけど、ひとりごとで……ううん、ひとりよがりで終わらせないって決めたときのことは、僕がこの先、何十曲、何百曲とつくったって忘れない自信がある。でも、どんなに自信があったって迷う日はきっとくるから」
「俺がいても?」
自分でもびっくりするくらい声がこわばってて、そーちゃんが目をまるくした。あーあ、本当は〝何十曲、何百曲とつくったって〟のところに食いつきたかったのに。
赤ちゃん電気がなくても、そーちゃんがどんな顔したかは見える。薄暗いなかでどたばたして目が慣れてるせいもあるけど、こういうことをするようになる前から、そーちゃんとはこの距離でたくさんおしゃべりしてきたから。片想いだった頃よりも更に前から、このひとをちょっとでも多くわかりたくて、きっと、ほかのどんなやつよりも見てきたつもり。
「君といても。環くんのことは誰よりも頼りにしてるけど、頼りきりになるのはまた違うだろ?」
「まぁ、確かに。でもさー、俺としては、一番に頼ってほしいわけ。相方だし、彼氏だし」
「頼りにしてるよ。してなかったら、こんなに甘えてない」
なんか動いたと思ったら、そーちゃんが乗っかってきて、くちびるの先にちゅって吸いついてきた。かわいいけど、もうちょっとしっかりくっつけてくれてもいいのに。
「ものたりない?」
「……たりなくなった」
きっとまた、あとは寝るだけってタイミングでいきなり変なこと考えちゃう日はくる。眠る前の時間って、そういうのを連れてくるのが好きだから。
でも、こんなふうにおしゃべりして、ほんのちょっとだけ夜更かししちゃう夜があるのも、たまには悪くないって思うんだ。