教えて環くん!
独創的なイラストを描く相方に、絵を教えることになった。きっかけは職業体験で壮五が画家の仕事を体験したこと。IDOLiSH7のメンバー内で、環は絵心があると言われている。二人はMEZZO"として組んでいることもあって、ともに過ごす時間が多い。そういった事情から、壮五は環に絵を教えてもらうことになったのだ。もっとも、環がいくら絵を教えても、壮五の独創的なイラストはなかなか改善されることはなかったのだが。
その後、二人が徐々に心を通わせ、壮五が環に向ける感情にほんのりと恋慕の色が含まるようになってから、変わったことがある。
――スキーかスノーボードか……環くんが教えてくれるって言ってたから、スノーボードかな。
――環くん、カルタのやり方教えてくれるかい?
――数字を探してたら次の数字を言われてわからなくなっちゃって……ビンゴってなかなか大変だね。ありがとう、環くん。
――友チョコお渡し会では環くん監修のもと、からし入りのロシアンルーレットをすることになったよ。
――環くん、クッキーに絵を描くって、どんなことを描けばいいのかな?
環自身や他のメンバー、紡の耳に入る、壮五からの〝環くんに教えてもらったこと〟たち。大和は「まーた惚気かぁ」とげっそりしていた。環としては、壮五に甘えられているようで悪い気はしないらしい。甘えさせてくれる人がタイプだが、たまには甘えさせてやってもいいと思っている環にとって、壮五の甘え方はいじらしくて聞いてやりたくなる、ちょうどいい塩梅なのだろう。それは教えを乞う壮五の目から見ても明らかだった。
人に教えを乞う。プライドの高い壮五には、昔では考えられないことだった。家を飛び出してアイドルとなり、さまざまなことを学んでいくうちに知ったのは、素直に教えを乞うことで得られる効果。特に、環に教えを乞うことで得られるそれは、壮五にとってあまりにも絶大なものであった。
「はぁー……いいよ、俺が教えてやんよ」
やれやれと溜息をつきながらも、壮五に付き合ってくれる。兄の立場である環は基本的に面倒見がいいから、壮五が満足するまで、壮五にかかりっきりになってくれる。この時間だけは、彼は自分だけを見てくれる。他のことよりも、自分を優先してくれる。独占欲と優越感は、環に恋心を抱く壮五にとって、どんなスパイスよりも刺激的だ。
「環くん、ありがとう」
壮五がそう微笑むと、環もまんざらでもないらしく、頬を染めてふいと視線を逸らす。
「別に。そーちゃんが教えてって言うからだし」
言葉だけ捉えればつっけんどんなもの言いに思えるが、環の声色から、ただの照れ隠しだということがありありとわかる。
(環くん、かわいい……!)
あぁ、どうしよう。毎日、どんどん好きになってしまう。高鳴る胸に、潤む瞳。まさか自分が恋をすると、若いアイドルが歌うようなラブソングの歌詞そのままの姿になってしまうなんて思いもしなかった。自分がアイドルだからだろうか? てっきり、十代の頃から愛してやまないロックのように、もっと激しく情熱的な気持ちに包まれると思っていたのに。
「……なに」
「え?」
「や、人の顔じろじろ見てっから」
指摘されて、環のことを見つめていたことに気付く。でも、仕方がない。だって、壮五が恋した相手はとびっきり格好よくて、優しくて、唯一、壮五のことを甘やかせる男なのだから。
「あぁ、ごめんね。環くんは僕にいつもいろいろなことを教えてくれるなぁ、ありがたいなぁって思ってたんだ」
「ふぅん」
壮五の言葉にまた照れてしまったらしい環は少し視線を彷徨わせると、意を決したように壮五に向き直った。
「あのさ、いっつも俺が教えてやってるから、たまには、そーちゃんからも教えてほしいんだけど」
「いいよ。僕で教えられることならなんでも。きみにはいつも助けられてるからね」
学校から出された課題? それとも、音楽のこと? もしかして、番組用に書かなければならないアンケートのこと?
「……あのさ、そーちゃんが俺の恋人になってくれる方法、教えて」
「…………はっ?」
「は? じゃねえよ。あのな、あんたの気持ち、だだ漏れなの。さすがの俺でもわかってんよ。あんた、俺のこと好きじゃんな?」
あざと過ぎるんだよ。そう言って、頭にチョップをされる。
そんな、まさか、気持ちが知られていたなんて。夢なら夢だと思いたい。でも、頭のてっぺんがじわりと痛いのが、夢ではない証拠だ。
その後、二人が徐々に心を通わせ、壮五が環に向ける感情にほんのりと恋慕の色が含まるようになってから、変わったことがある。
――スキーかスノーボードか……環くんが教えてくれるって言ってたから、スノーボードかな。
――環くん、カルタのやり方教えてくれるかい?
――数字を探してたら次の数字を言われてわからなくなっちゃって……ビンゴってなかなか大変だね。ありがとう、環くん。
――友チョコお渡し会では環くん監修のもと、からし入りのロシアンルーレットをすることになったよ。
――環くん、クッキーに絵を描くって、どんなことを描けばいいのかな?
環自身や他のメンバー、紡の耳に入る、壮五からの〝環くんに教えてもらったこと〟たち。大和は「まーた惚気かぁ」とげっそりしていた。環としては、壮五に甘えられているようで悪い気はしないらしい。甘えさせてくれる人がタイプだが、たまには甘えさせてやってもいいと思っている環にとって、壮五の甘え方はいじらしくて聞いてやりたくなる、ちょうどいい塩梅なのだろう。それは教えを乞う壮五の目から見ても明らかだった。
人に教えを乞う。プライドの高い壮五には、昔では考えられないことだった。家を飛び出してアイドルとなり、さまざまなことを学んでいくうちに知ったのは、素直に教えを乞うことで得られる効果。特に、環に教えを乞うことで得られるそれは、壮五にとってあまりにも絶大なものであった。
「はぁー……いいよ、俺が教えてやんよ」
やれやれと溜息をつきながらも、壮五に付き合ってくれる。兄の立場である環は基本的に面倒見がいいから、壮五が満足するまで、壮五にかかりっきりになってくれる。この時間だけは、彼は自分だけを見てくれる。他のことよりも、自分を優先してくれる。独占欲と優越感は、環に恋心を抱く壮五にとって、どんなスパイスよりも刺激的だ。
「環くん、ありがとう」
壮五がそう微笑むと、環もまんざらでもないらしく、頬を染めてふいと視線を逸らす。
「別に。そーちゃんが教えてって言うからだし」
言葉だけ捉えればつっけんどんなもの言いに思えるが、環の声色から、ただの照れ隠しだということがありありとわかる。
(環くん、かわいい……!)
あぁ、どうしよう。毎日、どんどん好きになってしまう。高鳴る胸に、潤む瞳。まさか自分が恋をすると、若いアイドルが歌うようなラブソングの歌詞そのままの姿になってしまうなんて思いもしなかった。自分がアイドルだからだろうか? てっきり、十代の頃から愛してやまないロックのように、もっと激しく情熱的な気持ちに包まれると思っていたのに。
「……なに」
「え?」
「や、人の顔じろじろ見てっから」
指摘されて、環のことを見つめていたことに気付く。でも、仕方がない。だって、壮五が恋した相手はとびっきり格好よくて、優しくて、唯一、壮五のことを甘やかせる男なのだから。
「あぁ、ごめんね。環くんは僕にいつもいろいろなことを教えてくれるなぁ、ありがたいなぁって思ってたんだ」
「ふぅん」
壮五の言葉にまた照れてしまったらしい環は少し視線を彷徨わせると、意を決したように壮五に向き直った。
「あのさ、いっつも俺が教えてやってるから、たまには、そーちゃんからも教えてほしいんだけど」
「いいよ。僕で教えられることならなんでも。きみにはいつも助けられてるからね」
学校から出された課題? それとも、音楽のこと? もしかして、番組用に書かなければならないアンケートのこと?
「……あのさ、そーちゃんが俺の恋人になってくれる方法、教えて」
「…………はっ?」
「は? じゃねえよ。あのな、あんたの気持ち、だだ漏れなの。さすがの俺でもわかってんよ。あんた、俺のこと好きじゃんな?」
あざと過ぎるんだよ。そう言って、頭にチョップをされる。
そんな、まさか、気持ちが知られていたなんて。夢なら夢だと思いたい。でも、頭のてっぺんがじわりと痛いのが、夢ではない証拠だ。