抱かれたい男
ミスター下岡が司会を務める音楽番組。通常は一時間の生放送だが、今週は二時間の放送枠となっている。IDOLiSH7はスペシャルメドレーと称して『ナナツイロREALiZE』とそのカップリング曲である『Viva! Fantastic Life!!!!!!!』を歌うことになった。
CDのリリースは翌週水曜日。カップリング曲はタイトルしか発表しておらず、試聴動画も公開していないから、この番組が初披露になるというわけだ。
自分たちのライブと違って、音楽番組で衣装替えまではできないため、二曲とも『ナナツイロREALiZE』の衣装で披露する。
ステージの準備が整うまではいつも通り、ミスター下岡から話を振られて、それに答える形式での短いトークコーナー。七人とミスター下岡が収まるところまで引いたカメラから、ミスター下岡を大きく映すカメラへと切り替わった。
「高校生の二人は大変でしょ~? 学校も仕事もって。ちゃんと寝れてる?」
「お気遣いありがとうございます。学業は、仕事のスケジュール上、やむを得ない場合は別途、特別課題を提出することで、なんとか両立できてます」
別のカメラが一織の表情をズームアップする。リハーサル通り、一織はカメラに視線を投げて優しく微笑んだ。それを目ざとく見つけた観覧席から、きゃあ! と黄色い声が上がる。恐らく、テレビ越しに見ている視聴者も、黄色い声を上げたことだろう。
「そー、課題すっげえ多い」
「大変だねぇ。事務所の寮で共同生活してるって聞いたけど、普段はどんな感じ?」
話を振られた大和が口を開く。
「家事は当番制なんですけど、食事はミツの手料理が一番人気ですね」
男の手料理というワードに、観覧席が沸いた。
「あぁ、三月くんは調理師免許持ってるんだっけ?」
「はい、実家が洋菓子店で、事務所に入る前は店の手伝いもしてました」
「この前、三月と一織の実家のケーキ食べたんですけど、すっごくおいしかったです!」
オレ、一気に二つも食べちゃった! と陸が笑う。観覧席からは「かわいー!」という声がした。その声に陸は頭をぺこりと下げ「ありがとうございます」と返す。
「甘さ控えめなデザートもあって、僕もおいしくいただきました」
「俺、いおりんが課題終わってからっつったせいでなかなか食えなかった……」
環が唇を尖らせる。抱かれたい男ランキング五位の四葉環といえど、中身は高校生。課題に追われることだってある。
「勉強は大事だからねぇ。ちゃんと終えて、ケーキ食べられたのかな?」
「いおりんに見てもらって、なんとか終わった。けど、他のみんなもう食べ終わってたからつまんなかった。ケーキまじでうまかったけど」
観覧席から「環~! えらいよ~!」という声が飛んできて、環はピースサインで応えた。ちょうどその時、スタッフから準備完了の合図が送られ、IDOLiSH7の七人はすぐ隣にあるステージへと移動する。
「それでは二曲続けてお聴きください。IDOLiSH7で『ナナツイロREALiZE』と『Viva! Fantastic Life!!!!!!!』!」
『ナナツイロREALiZE』はリリースが決まった頃より頻繁に宣伝されており、前もってMVも公開されていた。そのため、観覧席の反応も、離れたところから見守っている紡の予想の範囲内だ。それでも、念のため、ポケットからスマートフォンを取り出してSNSの反応を窺ってみる。本人たちにはエゴサーチはあまりしないよう言っているが、マネージャーである自分はエゴサーチしなければならない。IDOLiSH7がデビューして少しした頃に、一織からそうアドバイスされている。
ざっと目を通したところ「やっと見れた! 早くライブで聴きたい!」や「CD出るの来週? 今すぐ来週水曜になって!」といった好意的なものが目立つ。
よかった……と安堵の溜息を漏らし、紡はまなじりを下げた。問題は次の曲。これまでのIDOLiSH7の曲とは雰囲気が違う。果たして、受け入れてもらえるのだろうか。スマートフォンを握る手に力が入るのが自分でもわかった。
曲が変わり、彼らが『Viva! Fantastic Life!!!!!!!』を歌い始めた途端、紡の開いているSNSの画面は、文字の流れるスピードが急激に速くなった。
(えっ……えっ、速っ…………)
観覧席の様子を見つつ、慌てて画面を追う。あぁ、目がもっとほしい。私がもう一人いれば! 思わず、そんなことを考えてしまった。SNSでは「やばい」とか「エロい」という単語だけのものから、投稿文字数いっぱいの感想であふれている。未成年もいるし、そもそも私も未成年なんだけどなぁ……と少し複雑に思いながら読み進めた。
数分後、二曲を歌い終えた七人が頭を下げ、元のスタジオへと戻っていく。
放送上はここでCMに入り、そのあとはラストを飾るTRIGGERが新曲を披露して、番組のエンディング。CMの間、紡はSNSの画面に再び視線を落とす。少し長めの文が目に留まった。これくらいなら、かいつまんで本人に伝えてもいいだろう。
『環、宿題が~~って話してるのはかわいい高校生って感じなのに、あのBrakingのとこかっこよすぎてさすが抱かれたい男五位、やばかった』
翌日、壮五は夕食前の空き時間に前日のオンエアをチェックした。各々のスケジュールの合間にオンエアを見て、全員でのレッスンの時に改善点などを出し合うからだ。
歌う前のトーク内容では何度か一時停止をして、一人反省会。できればどの番組でも全員がまんべんなく発言したいというのが自分たちの共通認識。
(今回はうまく発言できていた、かな……目線も大丈夫……)
歌っている最中も、リハーサル通りのカメラワークに合わせた目線ができていたかのチェックが必要で、単純に歌声だけを聴いているわけではない。
(あ……)
自分のパートのすぐあとに続く環のパート。収録が終わったあと、紡が全員を送り届けてくれた車の中で、環に「ファンの評判がよかった」と話していた部分だ。そういえばここだったなと思ったのに、壮五はそこで思考が止まってしまった。
長い脚を強調するカメラワーク。次いで、画面いっぱいに映し出された挑戦的な視線。
顔に熱が集まるのがわかる。
正直なところ、壮五も、環のことは実年齢通りの子どもだと思っている。なにかに拗ねて唇を尖らせたり、王様プリンをねだったりする時などは、実年齢より下ではないかとさえ思うくらいだ。
しかし、今の環はどうだ。
(かっ……こいい………………)
抱かれたい男ランキング五位というのも頷ける。というか、壮五としては。
(だ、抱かれたい……)
服の胸許を握る手に力が入ってしまった。瞳が潤んで、……あぁ、どうしよう、明日も朝早くから仕事なのに。
それから、どれくらいの時間そうしていただろうか。
「そーちゃーん、晩メシ……」
ノック音とともにドアが開かれ、壮五が〝抱かれたい〟と思った張本人が姿を現した。
「あ、……環くん……」
発した声は甘く掠れていて、自分でも、欲情しているのがわかる。しかし、環はというと、テレビ画面と壮五を交互に見たあと、眉間にぎゅっと皺を寄せてしまった。
「……またTRIGGERにうっとりしてんの?」
壮五が慌ててテレビ画面を振り返ると、ちょうど、歌い終えたTRIGGERが頭を下げているところだった。完全に誤解された。
「ち、違う! そうじゃなくて、……えっと」
否定はしたものの、壮五はうまい言葉が見つからなくて、そのまま俯いてしまった。
(あー、あー。相変わらずだな、この人)
自分の気持ちを打ち明けることが下手なこの相方を、このまま放置するわけにはいかない。環は頭をがしがしと掻くと、壮五の前にゆっくりとしゃがみ込む。両手を優しく握って、じっと顔を覗き込んで。施設のチビたちを相手しているみたいだなと思った。
「わかったから。ゆっくりでいいから。俺、聞くから。言ってみ?」
ん? と小首を傾げて畳み掛ける。ここまでやって、壮五はようやく、落ち着きを取り戻したらしい。
「昨日のオンエアをチェックしてて」
「それはわかる。そんで?」
テレビの画面は録画部分の再生を終え、自動的に現在放送中の番組へと切り替わっていた。それをちらりと確認しながら、続きを促す。
「……マネージャーが言ってただろう? 昨日の環くんの評判がとてもよかったって」
「そーちゃんだってよかったって言われてたじゃん」
確かに、昨日の紡はやや興奮気味に、SNS上で新曲の評判が凄まじかったと話していた。それこそ、目で追うのが大変なほど、投稿があふれかえっていたと聞く。
「そう、それで……特にきみのダンスが、って話だったから、重点的に見てたんだ」
「……おぉ、ありがと」
環自身、ダンスは得意分野だと自負している。自分の得意なものを、壮五が重点的に見てくれていたことに、環は心の中がむずむずしてくるのを感じた。だって、自分のダンスを重点的に見ていて、こんな表情になっているなんて。それって、つまり。
多分、次に出てくる言葉は環を喜ばせるものに違いない。聞きたい。なにがなんでも聞きたい! 壮五の手を握る手に力が入ってしまう。壮五もそのことに気付いたのか、ぱっと頬を赤らめて、再び俯いてしまった。
「えっと……なので、そういうこと、…………です」
はっきり言うのは恥ずかしくて、もごもごと唇を動かし、話を終わらせようとする。
「んも~~! そうじゃねえ! そこ言えって!」
がっくり、という文字が環の背後に見えるようだ。
「だ、だって、言えるわけないじゃないか! そんな、た、……環くんのダンスが格好よくて……抱、……だめだ、許してくれ…………」
「……もうそこまで言ったら言ってるもドーゼンじゃん。言って」
な? ともう一度、畳み掛けた。お願い、言って! と心の中で念を送る。
言ってほしいと期待を寄せる環には敵わない。自分の手を握ったままの環の手に額を押し当てて、壮五は震える声で打ち明けた。
CDのリリースは翌週水曜日。カップリング曲はタイトルしか発表しておらず、試聴動画も公開していないから、この番組が初披露になるというわけだ。
自分たちのライブと違って、音楽番組で衣装替えまではできないため、二曲とも『ナナツイロREALiZE』の衣装で披露する。
ステージの準備が整うまではいつも通り、ミスター下岡から話を振られて、それに答える形式での短いトークコーナー。七人とミスター下岡が収まるところまで引いたカメラから、ミスター下岡を大きく映すカメラへと切り替わった。
「高校生の二人は大変でしょ~? 学校も仕事もって。ちゃんと寝れてる?」
「お気遣いありがとうございます。学業は、仕事のスケジュール上、やむを得ない場合は別途、特別課題を提出することで、なんとか両立できてます」
別のカメラが一織の表情をズームアップする。リハーサル通り、一織はカメラに視線を投げて優しく微笑んだ。それを目ざとく見つけた観覧席から、きゃあ! と黄色い声が上がる。恐らく、テレビ越しに見ている視聴者も、黄色い声を上げたことだろう。
「そー、課題すっげえ多い」
「大変だねぇ。事務所の寮で共同生活してるって聞いたけど、普段はどんな感じ?」
話を振られた大和が口を開く。
「家事は当番制なんですけど、食事はミツの手料理が一番人気ですね」
男の手料理というワードに、観覧席が沸いた。
「あぁ、三月くんは調理師免許持ってるんだっけ?」
「はい、実家が洋菓子店で、事務所に入る前は店の手伝いもしてました」
「この前、三月と一織の実家のケーキ食べたんですけど、すっごくおいしかったです!」
オレ、一気に二つも食べちゃった! と陸が笑う。観覧席からは「かわいー!」という声がした。その声に陸は頭をぺこりと下げ「ありがとうございます」と返す。
「甘さ控えめなデザートもあって、僕もおいしくいただきました」
「俺、いおりんが課題終わってからっつったせいでなかなか食えなかった……」
環が唇を尖らせる。抱かれたい男ランキング五位の四葉環といえど、中身は高校生。課題に追われることだってある。
「勉強は大事だからねぇ。ちゃんと終えて、ケーキ食べられたのかな?」
「いおりんに見てもらって、なんとか終わった。けど、他のみんなもう食べ終わってたからつまんなかった。ケーキまじでうまかったけど」
観覧席から「環~! えらいよ~!」という声が飛んできて、環はピースサインで応えた。ちょうどその時、スタッフから準備完了の合図が送られ、IDOLiSH7の七人はすぐ隣にあるステージへと移動する。
「それでは二曲続けてお聴きください。IDOLiSH7で『ナナツイロREALiZE』と『Viva! Fantastic Life!!!!!!!』!」
『ナナツイロREALiZE』はリリースが決まった頃より頻繁に宣伝されており、前もってMVも公開されていた。そのため、観覧席の反応も、離れたところから見守っている紡の予想の範囲内だ。それでも、念のため、ポケットからスマートフォンを取り出してSNSの反応を窺ってみる。本人たちにはエゴサーチはあまりしないよう言っているが、マネージャーである自分はエゴサーチしなければならない。IDOLiSH7がデビューして少しした頃に、一織からそうアドバイスされている。
ざっと目を通したところ「やっと見れた! 早くライブで聴きたい!」や「CD出るの来週? 今すぐ来週水曜になって!」といった好意的なものが目立つ。
よかった……と安堵の溜息を漏らし、紡はまなじりを下げた。問題は次の曲。これまでのIDOLiSH7の曲とは雰囲気が違う。果たして、受け入れてもらえるのだろうか。スマートフォンを握る手に力が入るのが自分でもわかった。
曲が変わり、彼らが『Viva! Fantastic Life!!!!!!!』を歌い始めた途端、紡の開いているSNSの画面は、文字の流れるスピードが急激に速くなった。
(えっ……えっ、速っ…………)
観覧席の様子を見つつ、慌てて画面を追う。あぁ、目がもっとほしい。私がもう一人いれば! 思わず、そんなことを考えてしまった。SNSでは「やばい」とか「エロい」という単語だけのものから、投稿文字数いっぱいの感想であふれている。未成年もいるし、そもそも私も未成年なんだけどなぁ……と少し複雑に思いながら読み進めた。
数分後、二曲を歌い終えた七人が頭を下げ、元のスタジオへと戻っていく。
放送上はここでCMに入り、そのあとはラストを飾るTRIGGERが新曲を披露して、番組のエンディング。CMの間、紡はSNSの画面に再び視線を落とす。少し長めの文が目に留まった。これくらいなら、かいつまんで本人に伝えてもいいだろう。
『環、宿題が~~って話してるのはかわいい高校生って感じなのに、あのBrakingのとこかっこよすぎてさすが抱かれたい男五位、やばかった』
翌日、壮五は夕食前の空き時間に前日のオンエアをチェックした。各々のスケジュールの合間にオンエアを見て、全員でのレッスンの時に改善点などを出し合うからだ。
歌う前のトーク内容では何度か一時停止をして、一人反省会。できればどの番組でも全員がまんべんなく発言したいというのが自分たちの共通認識。
(今回はうまく発言できていた、かな……目線も大丈夫……)
歌っている最中も、リハーサル通りのカメラワークに合わせた目線ができていたかのチェックが必要で、単純に歌声だけを聴いているわけではない。
(あ……)
自分のパートのすぐあとに続く環のパート。収録が終わったあと、紡が全員を送り届けてくれた車の中で、環に「ファンの評判がよかった」と話していた部分だ。そういえばここだったなと思ったのに、壮五はそこで思考が止まってしまった。
長い脚を強調するカメラワーク。次いで、画面いっぱいに映し出された挑戦的な視線。
顔に熱が集まるのがわかる。
正直なところ、壮五も、環のことは実年齢通りの子どもだと思っている。なにかに拗ねて唇を尖らせたり、王様プリンをねだったりする時などは、実年齢より下ではないかとさえ思うくらいだ。
しかし、今の環はどうだ。
(かっ……こいい………………)
抱かれたい男ランキング五位というのも頷ける。というか、壮五としては。
(だ、抱かれたい……)
服の胸許を握る手に力が入ってしまった。瞳が潤んで、……あぁ、どうしよう、明日も朝早くから仕事なのに。
それから、どれくらいの時間そうしていただろうか。
「そーちゃーん、晩メシ……」
ノック音とともにドアが開かれ、壮五が〝抱かれたい〟と思った張本人が姿を現した。
「あ、……環くん……」
発した声は甘く掠れていて、自分でも、欲情しているのがわかる。しかし、環はというと、テレビ画面と壮五を交互に見たあと、眉間にぎゅっと皺を寄せてしまった。
「……またTRIGGERにうっとりしてんの?」
壮五が慌ててテレビ画面を振り返ると、ちょうど、歌い終えたTRIGGERが頭を下げているところだった。完全に誤解された。
「ち、違う! そうじゃなくて、……えっと」
否定はしたものの、壮五はうまい言葉が見つからなくて、そのまま俯いてしまった。
(あー、あー。相変わらずだな、この人)
自分の気持ちを打ち明けることが下手なこの相方を、このまま放置するわけにはいかない。環は頭をがしがしと掻くと、壮五の前にゆっくりとしゃがみ込む。両手を優しく握って、じっと顔を覗き込んで。施設のチビたちを相手しているみたいだなと思った。
「わかったから。ゆっくりでいいから。俺、聞くから。言ってみ?」
ん? と小首を傾げて畳み掛ける。ここまでやって、壮五はようやく、落ち着きを取り戻したらしい。
「昨日のオンエアをチェックしてて」
「それはわかる。そんで?」
テレビの画面は録画部分の再生を終え、自動的に現在放送中の番組へと切り替わっていた。それをちらりと確認しながら、続きを促す。
「……マネージャーが言ってただろう? 昨日の環くんの評判がとてもよかったって」
「そーちゃんだってよかったって言われてたじゃん」
確かに、昨日の紡はやや興奮気味に、SNS上で新曲の評判が凄まじかったと話していた。それこそ、目で追うのが大変なほど、投稿があふれかえっていたと聞く。
「そう、それで……特にきみのダンスが、って話だったから、重点的に見てたんだ」
「……おぉ、ありがと」
環自身、ダンスは得意分野だと自負している。自分の得意なものを、壮五が重点的に見てくれていたことに、環は心の中がむずむずしてくるのを感じた。だって、自分のダンスを重点的に見ていて、こんな表情になっているなんて。それって、つまり。
多分、次に出てくる言葉は環を喜ばせるものに違いない。聞きたい。なにがなんでも聞きたい! 壮五の手を握る手に力が入ってしまう。壮五もそのことに気付いたのか、ぱっと頬を赤らめて、再び俯いてしまった。
「えっと……なので、そういうこと、…………です」
はっきり言うのは恥ずかしくて、もごもごと唇を動かし、話を終わらせようとする。
「んも~~! そうじゃねえ! そこ言えって!」
がっくり、という文字が環の背後に見えるようだ。
「だ、だって、言えるわけないじゃないか! そんな、た、……環くんのダンスが格好よくて……抱、……だめだ、許してくれ…………」
「……もうそこまで言ったら言ってるもドーゼンじゃん。言って」
な? ともう一度、畳み掛けた。お願い、言って! と心の中で念を送る。
言ってほしいと期待を寄せる環には敵わない。自分の手を握ったままの環の手に額を押し当てて、壮五は震える声で打ち明けた。