マシンガン・トーク

『DUSK TiLL DAWN』パロディ(タマソー×ソーマス)

 大量発生したゾンビ〝ギャザード〟によって、街は混乱を極めた。特殊部隊『I.DOL』が出動し、救出された民間人は、現在も避難生活を強いられている。
 寮生活をしていたソーマスは、学校も寮も立ち入り禁止区域となったため、帰る場所がないのだと言い張って、タマソニーのもとに転がり込んできた。
「おまえさー……実家に帰りゃいいじゃんか」
「実家は遠いんです! 戻ってたらここに来られないじゃないですか!」
 きゃんきゃんと吠えられ、タマソニーは思わず耳を塞ぐ。相変わらずうるさい男だ。その上、話す時にいちいち距離が近い。
(こいつ、まじで疲れる……)
 こちらは三日間オペレーションルームに缶詰めだったのだ。そっとしておいてほしい。

 人間をギャザードへと変化させる『D‐Xウイルス』――それに抵抗するワクチンを入手するため『I.DOL』はセントラル総合病院に向かっていた。途中でソーマスとヤマーソンという民間人を救出したところ、ソーマスより「友人がセントラル病院に取り残されている」と聞き、やむを得ず、彼らに最低限の武器を持たせて行動をともにすることとなった。その際、まるで映画のヒーローのように颯爽と現れたタマソニーに、ソーマスはひと目で恋に落ちてしまったのだ。
 巨大なギャザードを倒したものの、諸悪の根源はまだ突き止められていない。だからといって、民間人を連れたまま行動し続けるわけにもいかない。以上の理由から『I.DOL』が一時撤退を決めた時も、寮が立ち入り禁止区域となったソーマスはタマソニーの傍を離れず、ここまでついてきた。ソーマスの同級生・イオは、ミックがしばらく面倒を見るらしい。
 民間人であるソーマスの入室を許可したのは、彼がゾンビ映画のマニアで、ギャザードの弱点を言い当てたことと、射撃訓練で一度触れただけにもかかわらず、銃の扱いが人並み以上にうまかったからだ。ギャザード対策を練り直すにあたって、彼の知識が役に立つかもしれない――隊長のナギストファーはそう判断し『I.DOL』本部と、敷地内にある仮眠室への入室を特別に許可した。
 タマソニーは地上が嫌いだと言って、数年前に自身のアパートを引き払い、仮眠室のひとつを自分専用のスペースへと変えている。組織内最年少の彼にそんなことが許されるのは、タマソニーが『I.DOL』きっての頭脳派で、彼がいなければ解決できなかった事件がいくつもあるからだ。
 ナギストファーは「寮に戻れるまで」という条件つきで、タマソニーの仮眠室とは別の部屋をソーマスに用意したのだが、ソーマスはというと、あてがわれた仮眠室には目もくれず、タマソニーの仮眠室に泊まり込んでいる。
「じゃあ、せめて自分の部屋帰れよなー。せっかく、たいちょーが特別に仮眠室用意してくれたんだから」
「でも、それだとタマソニーさんのお世話ができませんよ?」
「世話してもらってるやつが言う言葉じゃねえよ」
 むしろ、世話をしているのはこちらのほうだ。
『I.DOL』本部にあるタマソニー専用の仮眠室は、仮眠室という名称がつけられているものの、ワンルームマンションの一室といっても差し支えない。コンロは一口しかないが、ベッドやバスルームが備え付けられており、地上に出たくないと言ってきかないタマソニーでも、こことオペレーションルームの往復だけで生活が成り立ってしまう。大好物のプリンドリンクをはじめとした食材や日用品は、すべてインターネット通販で済ませているので、タマソニーは年々、引きこもりが加速している。
 タマソニーにとっては城ともいえる仮眠室に居座り続けるイレギュラーな存在……それが、さきほどからきゃんきゃんとやかましく騒いでいるソーマスというわけだ。
 それでも、タマソニーがソーマスを追い出さずここに置いているのにはわけがある。
「タマソニーさん? どうしました? あっ、プリンドリンク切れですか? 三日間缶詰め状態でしたもんね! やっぱり三本じゃたりませんか? 僕、もっと持ってきま」
「いーから」
 雑然とした部屋の中、タマソニーのためにプリンドリンクを取りに行こうとしたソーマスの手を引き、腕の中に閉じ込める。
「えっ? なんですか? あっ、わかりました! ハグをすると疲れが取れるっていいますもんね! 僕、タマソニーさんの癒し役ってことですね?」
 きらきらと瞳を輝かせ、タマソニーの顔を覗き込んでくる。
(こいつ、まじでうるせーし、わけわかんねーけど、顔はかわいいんだよなー……)
 そう、タマソニーがソーマスをここに置いているのは、ソーマスに興味があるから。
 自分のペースで、思いつくまま、ぺらぺらと話し、楽しそうに笑う。次はどんな話が出てくるのか、皆目見当がつかない。タマソニーの部屋に居座り、食事を用意したというから鍋の中を覗き込んだら、見たこともないくらい真っ赤なカレーがあった。疲れを取るには快適なバスタイムがいいのだと、タマソニーがシャワーを浴びている最中に突撃してきたこともある。咄嗟に股間を覆い隠して追い返したものの、あのままにしていたら、ソーマスになにをされていたかわかったものではない。とにかく、次はなにを言い出すのか、次はなにをやらかすのかと、気になって仕方がない。
 タマソニーは頭がいいだけでなく、外見も非常に整っていることから、非常に、女にモテる生活だった。言い寄る女たちの望むことはわかりやすかったし、どう断れば諦めてくれるのかも簡単に予測できた。
 それをそのまま実行し、面倒な恋愛ごとを遠ざけて、気ままに暮らしてきたのに。
 相手がソーマスだと、なにもかもうまくいかない。いい加減諦めてくれたらいいのにと思い、興味のない素振りを続けても、まったくといっていいほど効果がなかった。
「タマソニーさん、三日間お疲れさまです! ……三日も、だから」
 ソーマスの瞳が妖しく光り、背筋がぞくりとする。彼は、タマソニーが羽交い絞めにしたところで、おとなしくしてくれるような男ではない。

「ん、はぁ……っ、あ、そこ、すげーいい……」
「んん、ほほへふは」
 タマソニーの股間に顔を埋め、そそり勃ったものを懸命に頬張りながら、ちらりと視線を寄越してくる。黙っていればきれいでかわいい――女からすれば、格好いいといえるであろう――整った顔。タマソニーのペニスを頬張ってぼこりと膨らんだ頬に、言い表せられないほどの劣情を覚えてしまう。
 ソーマスがタマソニーにフェラチオをするようになったのは、ソーマスがこの部屋に転がり込んで十日ほど経った夜のことだった。
 ――あの、タマソニーさんのあそこ、当たってます……。
 ――うるせー……。
 眠る時もタマソニーの傍から離れようとしないソーマスに溜息をつきながら、狭いベッドで男が二人、身を寄せ合って眠っていた。部屋に入り浸っているという自覚はあるようで、ソーマスは床でいいと言ったのだが、守るべき民間人を床に転がして自分だけベッドですやすやと眠れるほど、タマソニーは非情な男ではない。なにより、いつもはやかましいこの子どもが、タマソニーの腕の中ではおとなしくなることがわかって、おもしろかった。だから、狭いと思いながらも、この男を抱き枕にして眠っているのだ。
 しかし、溜まるものは溜まる。若くて健康な男として、当然の摂理。
 ――そういえば、タマソニーさんって、その、そういうのって、どう処理されてるんですか?
 薄暗い部屋の中、ソーマスが頬を染めているのがわかって、タマソニーの心臓がどきりと跳ねる。あれ、こいつ、こんなにかわいかったっけ? タマソニーは背中に汗が噴き出るのを感じた。眠る時以外はうるさいだけの子どもだと思っていたのに。
 ――どうって、普通に、手で……っつーか、誰かさんが居座ってっから、抜けねーんだよ。察しろよ、そんくらい。
 ――えっ? じゃあ、僕のせいですか? すみません! じゃあ……。
 そう言って、ソーマスはずるずるとベッドの中に潜り込み、タマソニーのスウェットに手をかけたのだった。
(慣れてんのかと思ったけど、歯当たるし、全然気持ちよくなかったし……)
 意気揚々とタマソニーにフェラチオを始めたものだから、てっきりこういうことに慣れているのかと思いきや、歯ががつがつとぶつかり、勃起したものもあっという間に萎えてしまった。結局、その時はタマソニーが一人で処理をして終えたのだが。
(でも、こいつ学習能力はすげーんだよなー)
 ――すみません、タマソニーさん。初めてとはいえ、こんな……。
 ――え? あんた初めてなの?
 ――初めてに決まってるじゃないですか! 僕は男が好きってわけじゃありません!
 タマソニーだから好きになったのであって、それまでは恋愛に興味はなかったのだという。女の子に言い寄られたことは一度もないそうだ。タマソニーも目を瞠るほど整った顔立ちのソーマスだが、口を開けば大好きなゾンビ映画に関するマシンガントークなものだから、女の子たちは敬遠してしまったのだろう。
 初めてのくせに大胆な行動に出るなんて。行動パターンの読めなさに、タマソニーは一気に惹き込まれてしまい、それ以来、タマソニーは自分の感じるポイントを教え、ソーマスのフェラチオの腕を上げさせていったのだった。
「あー、それ、うん……」
「んむ……、ん……」
 くびれたところを舌先でぐりぐりと刺激され、腰がびくびくと震える。瞬く間に上達したフェラチオに、タマソニーはうっとりと目を細めた。自分で言うのもなんだが、サイズはわりと大きいほうだ。それを小さな口で懸命に頬張って、奉仕してくれる。うるさい男だが、かわいくてたまらない。
「ぷは……ん、ふふ……三日間も缶詰めだったからですかね? タマソニーさんのここ、濃いにおいがします」
 手でごしごしと扱きながら、陰嚢に鼻を押し当て、すんとにおいを嗅いだ。仕事だったとはいえ、三日間徹夜で風呂にも入っていない。ここに戻ってきてプリンドリンクを飲んだだけ。それなのに、ソーマスときたら嬉しそうにタマソニーに身を寄せ、ふんふんと鼻を鳴らして体臭を堪能している。変態だと思うと同時に、ものすごく、興奮した。
「あは、タマソニーさんのおちんちん、また大きくなりましたね! たくさん溜まってそうですし、一回びゅーって出しますか? どこに出します?」
 すっかり興奮した状態で、ソーマスはゆらゆらと腰を揺らす。
「ソーマスもがっちがちに勃ってんじゃん」
「あっ」
 ソーマスのジーンズを押し上げている膨らみに手を伸ばすと、甘い声が上がった。
「全然触ってねーのに勃ってんの、なんで? 俺のデカチン舐めてコーフンした?」
 ソーマスの身体が熱を帯びていることに興奮したタマソニーは、ふんふんと荒い息で鼻の孔を拡げ、ジーンズの前を寛げて勃起したものを取り出した。このまま先に射精させてやろうと、緩急をつけて扱き上げる。
「あっ、あん、あ……っ、あぁっ、あぁんっ、気持ちいいですっ」
「うわ、なにその声」
 わざとらしい喘ぎ声に手が止まってしまった。これまでも、何度かソーマスのペニスを触ってやったことはあったが、瞳を潤ませてはぁはぁと息を荒らげる程度だったのに。
「ん……、だって、エッチなことをする時って、こういう声出すんですよね? 僕、タマソニーさんがいない間に勉強したんです!」
 タマソニーが仕事をしていた三日間、アダルト動画で勉強したのだという。
「人の部屋でなに見てんだよこのエロガキ!」
 いいムードになってきたと思ったのに、とんだ誤算だ。まったく、ここでも予想外の発言が飛び出すなんて。
「エロッ……エロガキなんてひどいです!」
「エロガキじゃねーか! エロ動画なんか見やがって!」
 頬をぎゅうとつねると、思っていた以上に伸びて「お」と思う。ほっそりした顔をしているのにもちもちの頬。おもしろくなって、しばらくそのまま頬を引っ張って遊んだ。
「ひひゃ、ひひゃいへひゅ……」
 自分の頬を引っ張るタマソニーの手首を掴み、なんとか引き剥がそうともがく。
「……ったく。ほんっと、わけわかんねー……」
 最後に強くぎゅっと引っ張ってから指を離す。少し赤くなった頬を大きな手のひらで撫でると、騒いでいたソーマスは顔を赤らめ、急に照れだした。
「すみません、僕、でも……タマソニーさんに喜んでもらいたくて、そのためには勉強しなきゃって」
「ふーん。どんな勉強? フェラはちょーうまくなったけど」
「えっ? 僕のご奉仕、上達してますか? やったぁ! あぁ、練習してよかった!」
「は? 練習?」
 聞き捨てならない言葉が聞こえた気がするが気のせいだろうか。タマソニーのこめかみに青筋が浮かぶ。
「はい! タマソニーさんに気持ちいいところを教えてもらうだけじゃなくて、自分でも勉強しなきゃと思って! お仕事で疲れてるとオナニーするのも面倒でしょう? 疲れマラでも最高の射精をしてもらえるよう、フェラチオの特訓をしてたんです! だから、うまくなったって言われて安心しました!」
「待て待て待て待て! なんっ……なんだよ、フェラの特訓って!」
 ソーマスたちが通っている学校や寮は現在も立ち入り禁止区域のまま、休校状態が続いている。タマソニーがオペレーションルームで業務に就いている間、ソーマスは映画から得たゾンビの知識をナギストファーやミックに語ったり、インターネット配信でゾンビ映画を見たりと、休暇を楽しんでいるらしい。タマソニーはそう把握していたのだが、自分のあずかり知らぬところで他の男と肉体関係を持っていたなんて。顔も名前もわからない男への嫉妬心で、気が狂いそうだ。
「くっそ……」
「わっ!」
 ソーマスの身体を抱き上げると勢いよくベッドに転がし、そのまま覆い被さった。
「タマソニーさ、んんっ、んぅ……」
 うるさい口は黙らせるに限る。ゾンビの話とタマソニーへの好意を繰り出す小さな唇にかぶりつき、ぬるりと舌を差し込んだ。
「ふぅっ……」
「ン、……鼻で息しろって。わかんだろ、それくらい」
 恋愛経験はないと言っておきながら、どこかで経験をしてきたくせに。
「んぁ、あ、わかんな……っ、んんっ!」
 細い顎を強く掴み、唾液を注ぎ込んで飲ませた。
「こぼさず全部飲めよ」
 ごくりと喉が鳴ったのを確かめると、タマソニーは唇を解放し、自分に乗られているソーマスを見下ろす。とろんと瞳を蕩けさせ、壮絶な色香を放っていた。これなら引く手数多、フェラチオを覚えたいとねだれば、どんなに身持ちのかたい男でも、喜んで下半身を露出させることだろう。
 荒々しいくちづけで息を荒らげているソーマスの衣服を手早く剥ぎ取ると、萎えたペニスの周りに精液がべったりと付着していた。
「ベロチューでイッたん? 我慢きかねえのな。どこでそんなエロエロな身体にしてきたんだよ」
 汗ばんでしっとりした太腿を指が食い込むほど掴み、ぐっと大きく開かせた。
「やっ、恥ずかしいです!」
「……ふーん、確かに。恥じらってみせんのも、相手からすりゃ、加虐心に火つけられるだけだもんな」
「んぐ……」
 ソーマスの口に指を突っ込み、唾液を絡める。なにをされるかくらい、これまでの経験でわかっているだろうに、目を大きく見開いて、タマソニーのやることなすことにいちいち驚いているようだ。
「ひっ……」
 唾液で濡れそぼった指をつぷりと挿入した。かなり狭く、タマソニーの指を押し返そうとしてくる。タマソニーは生唾を飲み込み、ソーマスの後孔を解すことに専念した。
「すっげー狭いけど、俺の咥え込めんの? それとも、こっちはまじで初めて?」
 男とはいえ、こんなにかわいくてきれいな顔にフェラチオだけさせて終われる男がいるだろうか? 白くてきれいな肌に噛みつき、服の上からでもわかるくらいやわらかそうな尻たぶを揉みしだきながら、閉ざされた蕾を無理にでも開かせたくなるのでは。後孔を使っての性交渉は女の膣より締まりがいいと聞く。ソーマスの細い腰を掴んで、狭そうな後孔を穿ち、汚い欲で白く塗り潰したいという衝動に駆られるはずだ。
「男ってさ、ケツの孔から突っ込んだ中に、気持ちよくなれるとこあるらしーよ。知ってる? 前立腺って。まぁ、ソーマスこんなにエロエロなんだし知ってるか。じゃあ、教えて。ソーマスが気持ちよくなってあんあんってなるとこ」
 中に挿入した指をぐりぐりと動かし、ソーマスの腸内を確かめる。
「う、うぁ……、あ、あぁっ?」
「あ、見ーっけ」
 少し膨らんだところを見つけ、そこを指先で引っ掻くように刺激すると、ソーマスの身体がびくんと跳ねた。
「ひぁっ、あ、あっ、あぁ、あっ……あ、やら、あぁっ! あっ!」
「はは、すっげー。ちんこ触ってねーのに勃った。おもしれー」
 挿入する指の数を増やし、しこりを挟み込むようにいじると、ソーマスのペニスの先端から蜜があふれる。指先ですくって竿に塗り広げ、にちゃにちゃと音を立てて扱く。
「ソーマスのエロいちんこ、先っぽも、もうこんなにどろどろじゃん。またイキそ?」
「あっ! あ、あっ……イッちゃう、イッちゃいます……っ、タマソニーさ、あっ、もうだめ、あっ、あぁぁっ!」
 激しく身を捩り、ソーマスは勢いよく射精した。
「うわ、すっげー出たな。わかる? ソーマスのセーエキ、ここまで飛んでんの」
 顎の下にまでかかった精液を指先で拭い、ソーマスの口の中に突っ込んだ。
「どう? 自分のセーエキの味」
「うぁ、あ、にが……あ、ぁっ、あぁっ」
 ソーマスになにも言わせまいと、挿入する指の数を更に増やした。三本の指をばらばらに動かしたり、ピストンするよう動かしたり、快感を与えるのではなく拡げる動きだ。
「ケツで気持ちよくなってちんこびんびんにしてんの、男に抱かれる才能あり過ぎ。フェラの特訓したって言ってたけど、そのついでに何人のちんこ咥え込んだ? ここでエロエロになれるくらいだから結構な数なんじゃね? ソーマスのビッチ」
「えぁっ……や、ちがぁ……っ、ひっ、やぁぁっ!」
 両脚を開いて肩の上に担ぎ上げ、慣らされた蕾にずぶずぶとペニスを挿入していく。
「うわ、すげー締まる……」
 うねる肉筒に先端を刺激され、奥歯と腹に力を込めた。ここまでしておいて挿入後すぐに達してしまっては情けない。初めはあまりのきつさに痛みすら感じたものの、立派に張り出している雁首を過ぎたあたりからは、スムーズに腰を押し進めることができた。
「はーっ……きゅんきゅんしててまじで具合よ過ぎ。ケツの孔っていうか、もうこれ、性器? だよな」
「あー、あっ、あ、あぁ――ッ」
 母音しか発せられないようで「あ」とばかり声を上げるソーマス。太いものをずっぷりと根元まで咥え込み、全身をびくびくと痙攣させている。
「あー、そういや、ついにエッチしちゃったなー。俺、恋愛とか興味なかったのに」
「あ、あ……」
 ゆっくりと腰を引く。抜かないでと言わんばかりに吸い付いてきて、これはこれでたまらない。
「別に一生ドーテーでもいいかなって思ってたんだけど、なっ」
「んぁっ!」
 前立腺をごりっと抉られ、ソーマスのペニスがびくんと勃ち上がる。
「はは、まーたちんこ勃った。俺も結構溜まってるけど、ソーマスも溜まってたん?」
 知らないところでフェラチオの特訓をしていたくせに? と言外に込める。
「正直、すっげー溜まってっから、ちょー濃いの出そう。このまんま、ソーマスのナカに全部出していい? いいよな? 俺のこと好きなんだし、フェラの特訓とかするくらいにはエロいこと好きなんだろ?」
 尋ねるような言葉を使っているが、ソーマスがなんと言おうと、このまま中にぶちまけるつもりだ。ベッドをぎしぎしと軋ませながら、タマソニーはリズミカルに腰を前後に振った。
「んぁっ、あ、あっ、たま、タマソニーさ、あぁっ、運動、にがて、ってぇっ……」
「まーな、俺、頭脳派だし。……ン、また締まった。搾り取られそー……」
 ソーマスの言う通り、自分は身体を動かすよりも頭脳派だ。
「あ、あっ」
「でも、こーんな気持ちいいエッチなら、俺、毎日運動してもいいかも」
 自分の身体の下で全身を桃色に染め、甘い声を上げるこの男が見られるなら、セックスもいいかもしれない。
「あっ、あ……あ、まい、にち……」
「そ。毎日」
 ずんずんと奥を突きながら、律動に合わせてぷるぷると揺れるソーマスのペニスに手を伸ばした。
「やぁっ! あ、あっ、もっ……やら、あーっ、あ、あっ、あぁぁっ」
 先走りの液でどろどろになったペニスを揉み込むように刺激すると、ソーマスは気が狂ったように喘ぎ声を大きくした。
「声でか。しゃべってる時もうるせーけど喘いでる時もうるせーな。ま、かわいいからいいけど、あ、やば、俺もそろそろイキそ……あー、これもう出る、な、このまんまナカで全部飲んで……あ、出る、出るっ」
「あぁっ!」
 ひときわ強く奥を穿ち、溜まりに溜まった精液を一気に注ぎ込む。
(うわ、まじですっげー出てる……)
 自分でも引きそうなくらい出たなと感じた。すっかり上達したフェラチオで高められていたところに「フェラチオの特訓をしていた」ととんでもない爆弾を投げ込まれ、タマソニーの中でなにかが切れてしまったのだ。勢い任せとはいえ、一生捨てることはないかもなと思っていた童貞を捨ててまで、ソーマスの身体を貪ってしまった。
「はー……ありえねーくらい気持ちよかった……。……ソーマス?」
「ん、はぁっ……あ、タマソニーさん……」
 快感の抜けない身体で腕を懸命に伸ばし、タマソニーを抱き寄せる。まるで恋人のようにくちづけてくるソーマスがなんだかかわいくて、タマソニーはこっそりと笑った。
「ん、なにしてんだよ」
「はぁっ……だって、……タマソニーさんが僕の愛を受け入れてくれただけでなく、婚前交渉までしてくれるなんて……タマソニーさんからの愛の言葉がまだないのは少し残念ですけど、激しく抱かれて、最高のエクスタシーで……ふふ、タマソニーさんの愛、しかと受け止めました!」
「……は?」
 愛を受け入れた? 婚前交渉? なんの話だ?
「それにしても、タマソニーさんって童貞だったんですね! 嬉しいなぁ! タマソニーさんはすごく格好いいから、非童貞でもおかしくないと思ってました! 少し気怠げな感じとか、いっそヤリチンでもおかしくないかもって、失礼なことまで考えたことがあったんです。あ、すみません、タマソニーさんは恋愛に不誠実なんて設定を勝手につけてしまって。でも、映画のヒーローって、恋愛に一途か、女性関係がだらしないか、極端なんですよ。だから、タマソニーさんはどうかなって僕なりに考え抜いた結果、非童貞に全票投じよう! って感じでした」
「おまえまじで失礼だぞ」
「しかも! 僕に、初めて? と聞いてきたり、激しく責めてきたり、もしかして、タマソニーさんって、いわゆる処女厨ってやつなんですか? わかりますよ、男って、相手が初めてだと嬉しい、初めてであってほしいと強く思う人が多いっていいますし! 男の僕が処女ってどうかなってちょっと思うんですけど。でも、僕も、タマソニーさんが童貞でものすごく嬉しかったから、多分、処女厨の素質があったんでしょうね。あ、安心してください、僕はタマソニーさん一筋ですから、一生童貞で構いません! 婚前交渉に及んだわけですから、あとはもう結婚だけですね? 僕が卒業したら、パートナーとして届け出ましょう! もちろん、両親の許可はなんとしてももぎ取ってみせます! 任せてください!」
「あの」
「初体験を迎える時にはバスルームでいつも以上に念入りに身体を清めて、タマソニーさんに愛していただけるよう、いい香りのボディクリームなんかで肌を手入れして臨みたかったんですけど、こうやって、勢いで処女を散らすっていうのも、スリリングな映画みたいで興奮します! それに……タマソニーさんの、すごく気持ちよくて……初めてでも気持ちよくなれるなんて」
「ストップ。ストーップ!」
 一人で勝手に話を進めているのも止めたいし、それ以上に、今、ものすごく大事なことを言われた気がする。
「えっ、あ、結婚式や新居のことは二人で考えないといけませんよね。男同士だと二人でタキシードを着るのかな? タマソニーさんが望むなら、ウェディングドレスを着ることもやぶさかではないですけど……性交渉においては僕が女性役ということが確定したわけですし。でも、化粧をするのはいやだなぁ……すっぴんでもいいですか?」
「じゃなくて! 聞けって! ……なぁ、今、処女っつった?」
 男に処女という表現はどうなんだとタマソニーも思うが、今はそれどころではない。
「言いましたけど?」
「まじかぁー……俺の解析ミスじゃん……」
 へなへなとソーマスの上に倒れ込む。自分は、フェラチオの特訓をしたと豪語するソーマスの言葉から、彼が自分以外の男のものをしゃぶって練習をしたのだと判断した。ソーマスのこの色香だ、しゃぶらせるだけで相手の男が終われるはずがない。事実、後孔でこんなに快感を拾えるなんて、初めてとは思えない。タマソニーはそう解析したのだが。
「タマソニーさん?」
 タマソニーにとって、解析はできて当然のこと。ミスなんてありえない。そういうものなのに、ソーマスのこととなるとうまく解析ができない。悔しい。
「……ごめん」
「えっ、どうして謝るんですか?」
 ソーマスのことをふしだらな男だと決めつけ、強引に抱いてしまった。
「だって、ソーマス、初めてだったっていうし」
「順序が逆なのはびっくりしましたけど、どんな順序であっても、タマソニーさんと僕はハッピーエンドって決まってますから!」
「あのさ、フェラの特訓ってなに? あと、なんでそんなエッチな身体してんの?」
 タマソニーの質問に、ソーマスはぶわりと顔を赤らめた。
「それは、タマソニーさんにご奉仕しながら、大きさを覚えて……同じくらいのディルドを購入したんです。タマソニーさんがお仕事をしている間は、タマソニーさんに言われたことを思い出しながらそれを舐めて……お尻は……将来、タマソニーさんとの新婚初夜で失敗するわけにはいきませんから、お風呂に入るたび、自分の指でこっそりと」
「買ったディルド突っ込まずに?」
「だって、初めて挿れるのは、タマソニーさんのがいいから……」
「~~っ、もー!」
 ソーマスには一生、敵わないなと思った。今の今までぺらぺらとおしゃべりをしていたのに、抱き締めてくちづけると、顔を赤くしておとなしくなる。
(俺、こいつには一生敵わねーんだろーな……)
 いつも自分のペースでマシンガントークを繰り出す男。こんなの、他の誰の手にも負えない。ソーマスのことが解析できるのなら、うるさいくらいの言葉の雨に降られっぱなしでもいい。タマソニーの腕の中で眠る時だけおとなしいのも、くちづけた時に鼻で息をすることがわからなかったという初心さも、かわいくてたまらない。
 わざわざ言葉にはしてこなかったが、タマソニーは、とうにソーマスに溺れている。
「はー……もー、俺、いつの間にかソーマスに夢中になってたみたいでやばい……」
「……っ、いいじゃないですか! ハッピーエンドまでまっしぐらですよ!」
 今はまだ、警戒区域から一歩でも出るとギャザードが徘徊している世界だ。
 それでも、ソーマスと一緒なら、やつらのことも撃退して、ハッピーエンドを迎えられるのだろう。


    《ひとこと感想》

     



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