スターナイトラヴァー

概要

2021.01.10発行 成人向 頒布終了

文庫サイズ 66ページ(約26,000文字)
頒布価格 400円 通販価格は異なります

カバー:トレーシングペーパー 81kg
表 紙:スタードリーム209kg(シルバー)
本文:コミックルンバ(ブルー)

 父と対峙し、一人でラジオに出演した日。なかなか寝付けず、環に誘われるがまま、彼の腕の中で眠った。
 共寝を機に、環への恋心を自覚した壮五。叶えるつもりのない初恋を自分なりに楽しもうと割り切ったつもりでも、環の優しさに触れるたび、ときめきが止まらなくて苦しい。共寝で体温を感じると、あさましい欲が湧いてしまう。きれいなだけの恋なら、よかったのに。――甘酸っぱい初恋を綴った短編。

発行にあたって

 本来は、環くんがプロポーズするまでの奔走をオムニバス形式で綴った本にするつもりだったんですが、印刷所の冬のフェアをどうしても使いたくなってしまい、書いている最中のものにはどう考えても逆立ちしても雰囲気が合わなくて、思いきって雰囲気に合ったものをいちから書こう! とまっさらなところから書き始めました。
 ひたすら見た目の好みを追うと本文用紙がどうしても厚めになるので、(めくりにくくならないよう)絶対に短い話! というのも、書き始める時に決めていたことです。そうしたら、過去イチ短くなってしまいました。

タイトル

 表紙の紙(スタードリーム)から連想しました。絶対に絶対にスターという言葉を入れたかった。ナイトはnightとknightをかけています。

本の見た目

 表紙の鈍い銀色の紙はスタードリームのシルバーです。遊び紙だと他の印刷所でも見かけますけれど、この厚みで表紙にというのはあまりないなぁと思いました(料金表にない紙でもよほどのことがなければ取り寄せできるのは知っています)。
 ただ、環壮本の三冊目からはずっと文庫サイズで、カバーの折り返しにものすごくどうでもいい雑談を書いていて、それをなしにするのがいやだったので、別の印刷所でカバーを印刷してもらいました。カバーというか、フライヤー印刷でサイズをカバーのサイズに切ってもらいました。
 表紙のスタードリーム(シルバー)そのものがいい感じに夜っぽかったから、それが完全に見えなくなってしまわないように、トレーシングペーパーにしました。扱いづらい(湿気とかに弱い)紙なので、保管の時に破れてしまうかもしれないなぁと思いつつ。
 破れへの懸念については、遅かれ早かれかたちあるものはいずれ変わっていくという考えなので……破れたら破れたで、それも月日が経った証拠だし、わざとじゃないなら仕方ないかな。
 本文用紙がブルーなのはクリーム色より合う気がしたからです。
※ひたすら冬っぽい見た目だけれど、あとがきにある通り、話の中身は夏から秋に変わる頃です。

解説

 なんとなく、今夜は優しい曲を聴いてから眠りたいと思った。頭の中のプレイリストを探ってみるが、ぴんとくるものに辿り着けない。優しい曲をたくさん知っているのに、そのどれも、違う気がする。世の中の音楽を愛しているのに、どうして、どれも違うと思ってしまうんだろう。

【一緒に眠ろう】-スターナイトラヴァー

〝世の中の音楽を愛しているのに〟という言葉はどうしても入れたかった。〝音楽を〟ではなく〝世の中の音楽を〟と、好きなものを大きくしたかった。
 壮五くんはロックが好き、ではあるんですが、12Hits!のラジオパートでの様子から、多分、ジャンル分け隔てなく音楽を愛していると思っています。
「○○は聴くけど△△はちょっと……」みたいなタイプではなく〝音楽〟そのものが好き。もちろん、人間の得られる知識には限界があるし、壮五くんは天才ではないので、あまり触れていない系統の音楽もあるでしょう。でも、触れていない系統のことも決して敬遠・忌避しているわけではない。本当に、時間がたりなくて追い付いていないだけなんだ――と、わたしは思っています。

 背後から相方に抱き締められてこんなことをするなんて、どうかしている。尋常じゃない。そう思うのに、これが〝いけないこと〟だと思えば思うほど、壮五の身体はどんどん高まっていく。

【ひとりで寝させて】-スターナイトラヴァー

『一冊一自慰』を環壮R-18本に課しているので入れました。眠っている環くんに抱き締められながらという状態なので、罪悪感と背徳感が強い。
 でも、〝優秀な人間であれ〟と厳しく育てられた彼は、きっと、罪悪感や背徳感に苛まれながら得る快感にものすごく弱いと思います。

 壮五の優しさから芽生え、星空の下で自覚した初恋。こんなにきれいな生まれ方をした恋なのだから、ずっときれいなまま、壮五にも内緒でこっそり持っていようと思っていたのに。知られただけでなく、嫌われたかもしれない。

【ひとり寝の夜】-スターナイトラヴァー

 ここの短い四ページはあとから書きたした部分です。今までと同じように自分の部屋で眠る夜が、共寝を知る前と違うものになってしまった。自分の部屋は世界一居心地がいいはずなのに、なんとなく落ち着かないなという話です。

「初めは、あんたのこと、一番苦しい時、あのクソ親父が出てきて、俺が番組だめにしちゃった時に、そーちゃんだけは味方してくれて、嬉しいってだけだった」
「でも、それだけじゃなかった。そーちゃんのこと、ひとりじめしたい気持ちとか、そーちゃんのこと……全部、どんなそーちゃんも全部知りたいって気持ちのほうが、どんどん増えてって、こんなの、全然楽しくねえじゃんって」
「一緒に寝よって言ったのも、……ちょっとでも、近くにいたかったから」

【ふたりで眠りたい】-スターナイトラヴァー

 壮五くんの相槌や地の文を挟みつつとはいえ、環くんのひとつひとつのセリフが長いこれらが、この話の一番の盛り上がり部分なのかもしれません。
 きらきらして、ちょっとしたことで浮かれてしまうだけの楽しい恋が、楽しいだけじゃないと知ってしまったこと。それが苦しいのに、好きでいることをやめられなくて、ずるい手(共寝)に出たこと。自分の感情なのに、初めてなこともあって、うまく扱えない。環くんは結構器用なところがあるけれど、やっぱり十七歳の男の子なんだなというのが書きたかったところです。
 この章では環くんの言葉選びをいつもより攻め度高めにしました。

おわりに

 3部17章2話のことを何年経っても引きずっている地縛霊なので、息をするようにあの夜から関係が変わっていく話を書いてしまいました。
 この本とは別に、短編集に収録した話でも3部17章2話から関係が変わっていく話を書いたのですが、まだ飽き足らず……3部17章2話から関係が変わっていく二人の話は今後も書きたいなと思っています。

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