夜の手ほどき

概要

2020.08.22発行 成人向 頒布終了

文庫サイズ 122ページ(約55,000文字)
頒布価格 600円 通販価格は異なります

カバー:マシュマロ110kg(ホワイト)
表紙:色上質最厚口(コスモス)
本文:書籍用紙62kg(クリーム)
加工:カバーにホログラムPP(ハート)

 環と身体を重ねても、いまひとつ快感を得られない壮五。ある日、目を覚ますと、目の前で七年後の自分たちが情事に耽っていて……?
 壮五(二十七歳)の痴態に驚く環、環(二十四歳)の色気にどぎまぎする壮五。「未来のあんたは、気持ちいいことが大好きで、ちょーエロくなるよ」「僕の感じるところを教えてあげる」……七年後の彼らによる、夜の手ほどきが始まった!

発行にあたって

 n年後の自カプと現在の自カプが遭遇してなにやらエッチな展開になる! ……という話は一度は書いておきたかった。
 ただ、このジャンルで相手左右固定を完全に拗らせきった身でn年後攻め×現在の受け・現在の攻め×n年後受けを最後まで書くのは自分の精神に影響を与えそうだったので、キスと挿入は回避した話にしようと決めました。

タイトル

〝わかりづらいものはつくらない〟がスタンスなので、タイトルから雰囲気を連想できそうなものをと仮でつけていたら、もうこれ以外考えられなくなり、そのまま採用しました。

本の見た目

 n年後の自カプと現在の自カプが遭遇してエッチな展開になる――どう考えても様子がおかしい本なので、コッテコテの見た目にしてやろ! と、見た目をピンク色に、更にホログラムPP(ハート)を貼ってもらいました。
 ホログラムPP(ハート)のハートが小ぶりでかわいくなってしまったのは誤算です。

解説

 口を塞いでもらわないと、聞き苦しい声が出てしまう。焦点が合わないほど顔を近付けていないと、苦悶に満ちた顔を見られてしまう。そんなの、絶対にだめだ。
 環を愛おしく思う気持ちに、身体がついてきてくれない。元々負けず嫌いなところがある壮五は、当然、セックスについても、あれこれ調べまくった。彼を受け入れるところをきれいにする方法、そこをやわらかくするのに適したローション。勤勉な自分は、絶対にうまくできるようになる。そう信じて、得た知識をもとに夜な夜な努力しているのに、実践となると、愛を確かめ合う時間が、苦悶を耐える時間に変わってしまう。

【タイムトラベル】-夜の手ほどき

 あとがきでも少し触れた通り、今まで〝初夜から割とうまくいっていた環壮〟を書くことが圧倒的に多かったんですが、個人的に、彼はものごとがうまくいかない時は改善点を見出して並々ならぬ努力をするタイプだろうと思っているので、ただうまくいかないだけではなくて本人なりに努力してるという描写も入れました。

「あんまり昔のそーちゃんいじめてやんなよ。自分だぞ」
「わかってるけど……腹が立つんだ。問題が解消されないと、彼らの未来はないかもしれない……ここに辿り着けないかもしれないのに、二十歳の僕ときたら、秘密を知られたくないって頑なになって、青い顔をしてきみの気を引く。我ながら、ひどく恐ろしい男だと思ったよ」

【教えてあげる】-夜の手ほどき

 二十歳の壮五くんに二十四歳の環くんの引こうという気はさらさらないんですが、二十七歳の壮五くんは七年前に未来の自分たちと遭遇してなにがあったかを知っているので、過去の自分を牽制するために、もっともらしい言葉を並べ立てていじわるを言っています。

 交際歴はまだ短いとはいえ、壮五の身体は、相手が環というだけで瞳が潤み、鼓動が高鳴るようになっている。目の前の男は七年後の環だから、壮五が知っている環ではないのに、すべてを許してしまいそうだ。七年で男らしさに磨きがかかっているのも悪い。

【我慢しないで】-夜の手ほどき

 前章で二十七歳の壮五くんが過去の自分を牽制したのは、自身が過去にこう思ったからです。
 この章のタイトルは二十四歳の環くんから二十歳の壮五くんに向けた言葉です。

 ケツじゃなくてお尻だと指摘されないことに瞠目する。七年も交際をしていると、このあたりの言葉遣いなら多少雑でも不問になるのだろうか。

【ちゃんと覚えて】-夜の手ほどき

『環くんの使用言語逢坂検閲』はアプリ内特別ストーリーの口蓋垂事件以来積極的に盛り込んでいるんですが、2020年正月特別ストーリーで衛生観念が変えられたらしいと知り、七年後だと『環くんの使用言語逢坂検閲』もゆるくなっているのかなぁと思って入れました。
 この章のタイトルは二十七歳の壮五くんから十七歳の環くんに向けた言葉です。

 自分たちは、五年先、十年先を見据えて仕事をしている。仕事であればできるが、恋人というプライベートなことで、そんなにも先の未来を考えられるだろうか。
「俺は、ずっと一緒にいたいって思ってる。ケンカするだろうし、今みたいに、やきもちやくとかもあると思うけどさ。……レンアイとか興味なかったのに、いつの間にか俺のこと夢中にさせて、チューもなにもかも経験させた責任取ってよ」

【もっと聞かせて】-夜の手ほどき

 クライマックスになった途端いきなり真面目になったのでそれまでのラブコメっぽさとの温度差に「!?」になったかもしれないんですが、意味もなく未来軸の恋人と(最後までしていないとはいえ)いかがわしいことをしたことに対する落とし前はきちんとつけなければならないので、お互いの嫉妬心のやり場を決めさせました。
 この章のタイトルは十七歳の環くんと二十歳の壮五くんがお互いに向けている言葉です。

「偶然にも同じ夢を見ただけだったのか、それとも、本当にタイムトラベルをしていたのか。あの時はわからなかったけど、明日、七年前の僕たちが現れるかどうかで決まる」

【七年後の答え合わせ】-夜の手ほどき・おまけSS

 pixivにサンプルを公開した際のキャプションにも「夢オチなのか本当に遭遇したのかはふわっとさせています」と記載した通り、あくまでもふわっとさせたかったので〝明日〟は書きませんでした。
 読んだ方にお任せしますという書き方は本来しないタイプなんですが、こればかりは、断定しようとすると〝すこし・ふしぎ〟で済ませられなくなるからです。

おわりに

 あらすじだけ見るとラブコメ感が高いんですが、後半に進むにつれラブコメのラの地が見えなくなったのは、書いた人間が昏いタイプの話を好むからかもしれません。
 ただ、滅多に書こうとならない〝すこし・ふしぎ〟が書けたのは楽しかったです。

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